葦の浮船 新装版 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2021年6月15日発売)
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本棚登録 : 38
感想 : 4
3

性格も学問の研究スタイルも全く異なる二人の大学助教授の不思議な関係と大学内の悪しき支配秩序を描いた作品。
東京R大学国史科の折戸助教授は36歳で上代史専攻、小関助教授は34歳、中世史専攻。折戸が独自の発想を生かし業績を上げ、性格も社交的であるのに対し、小関は存在感を示せず風采も上がらない。
折戸は羽振りがよく女遊びが過ぎ、人妻との不倫関係も持つようになる。一方、小関は自らを鈍才と自覚し、学問研究に秀でる折戸を尊敬し、彼の頼みは何でも聞き入れていた。折戸は、人妻と享楽に耽った後、出世欲にとらわれ次第に相手を面倒に思うようになる。さらにその関係を精算できないうちに、小関に好意を寄せる若い女性を我が物にしようと企む。
小関は折戸の行為に辟易しながらも彼の「火遊び」の後始末を引き受けてしまう。そればかりか、相手の夫との修羅場に際しても折戸を庇おうとする。
能力は劣り朴訥だが、どこまでも誠実な小関を巧みに利用し、小関を慕う女性まで横取りしようとする折戸は恩を仇で返す最低の男だ。また、小関は性格はいいがお人好し過ぎる。
同僚同士がここまで支配・隷従の関係になる設定はすんなり受け入れがたかったが、終盤はスリリングで予期せぬ展開となり、面白かった。
ただ、小関の信じられないような従順さや諦念がだめ押しのように表現されるラストは、人間、誠実に生きるべしとの教えかもしれないが、現実味にかけ、興醒めてしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2021年9月15日
読了日 : 2021年9月14日
本棚登録日 : 2021年9月14日

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