1940年代後半から1960年代初頭にかけて書かれた猫に関する話を集めた短編集。「カロ」は登場する猫の名前。主人公は三代に渡って同じ名前の猫を飼っていた。タイトルを読むと内田百閒の「ノラや」のパロディかと思ってしまうが、この短編集には、それより前に書かれた作品が含まれている。
全体に流れるのはユーモラスな雰囲気だが、竹製のはえ叩きでカロを打擲する場面もあり、読者から非難の手紙が編集部に届いたそうだ。
そんなブラックな場面もあるが、それも著者の猫を溺愛する気持ちが高じたものと解釈できる。
主人公による打擲が身にしみ、おそるおそる食べ物を漁ろうとするカロの描写が秀逸。
「私の目の前では、黒豹か何かみたいに、肢を曲げ、背中を極度に低くして、すり足で歩く・・・私が猫叩きを摑むと、パッと電光のように走って逃げる」
目に浮かぶような場面描写に確かな観察眼と文筆家ならではの表現力を感じた。
最後に出てくる「大王猫の病気」では、大王として君臨する猫の体調の悪さに右往左往させられる家来やヤブ医者の猫の様子が擬人法でユーモラスに描かれ、落語を聞いているような愉快な気分になった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2025年4月28日
- 読了日 : 2025年4月24日
- 本棚登録日 : 2025年4月18日
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