2021年度文化功労者のなかに本シリーズ翻訳者 松岡享子さんのお名前があるのを見て手に取りました。
還暦近くでも味わえる素晴らしいシリーズです。
50年近く前の小学生の頃本シリーズの中の『ビーザスといたずらラモーナ』を読んで以来、思い出したように読み返しています。未読の作品もあり、本作はその中の1冊。
原作のベバリイ・クリアリーさんが今年2021年春104歳で旅立たれたということも今回知り、児童書ながら大人の心にも残るとても素敵な作品をこの世に沢山残してくださったことにお礼を申し上げたいと思います。
原作の初出は1969年のため、当時のアメリカの平均的なというか、決して裕福ではない庶民家庭のヘンリー君一家の生活水準が思いの外質素であることに気づきます。
友人が持っている自転車に憧れ、自分も手にしたいのに親に欲しいとは言えず、懸命にお金をセント単位で貯めながら、中古払い下げ自転車を手にするヘンリー君。
子どもから見える両親、友人、近所の人々、コミュニティがクリアリーさんの筆致と適切な日本語で紡ぎ出す松岡さんの言葉により浮き出てきます。
子どもの欲、望み、諦め、羞恥心、他者との比較による劣等感、友人への違和感、憤り等々ちっちゃなちっちゃな感情が日常生活にこれほど溢れているものかと痛感します。
人はごくごく当たり前の生活の中でこれほど様々な感情に折り合いをつけながら、日々を重ねていくものだと分かります。
ヘンリー君シリーズももちろん素晴らしいのですが、私個人としては女の子の姉妹ビーザスとラモーナシリーズに軍配かな。
今回も皆にとって不如意の塊であるラモーナがやらかしてくれるエピソードで何度もクスッと。
ポケットにミミズが入っていたり、チューイングガムを髪の毛につけて自分で髪の毛を散切りにしたりと、彼女のユニークな物差しは自由奔放で憧れ。
その子どもその子どもに各々の道理があるのですね。
2009年版のあとがきで訳者松岡さんの言葉がまた素敵です。本シリーズに長年携わってこられたからこその「変化」への言及。
すべては変わりゆくことを噛みしめたいものです。
- 感想投稿日 : 2021年10月28日
- 読了日 : 2021年10月27日
- 本棚登録日 : 2021年10月26日
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