愛の本 (ちくま文庫)

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ごはんさん  未設定  読み終わった 

「生きること」の意味を慈愛に満ちた分かり易いことばで綴った著作。とても滋味深い。私と同世代の社会学者である故菅野仁さんの言葉は、これからの私の心の拠り所となる予感。

「自分が自分であること」と「他者と生きること」の両立は実は難しい。私たちが生まれ育ったここは島国で、同質・均質性に価値を置いてきた社会だ。以心伝心であったり、家族や社会のための自己犠牲や滅私奉公が美化されてきたなかで、「私が私であること」を主張することは我儘や身勝手に変換されがちである。しかし、社会が成熟し、一定のルールの下で私たちは確実に豊かさや自由を手にして暮らせるようになってきた。では万全ではないものの、人々は何に幸せを感じるのか、正直彷徨い続けてきた。アラカンなのに…。
この言葉が好きではないのだが、「毒親」問題や、夫婦・親子関係等も捉え直しをする手がかりが有難い。
ああ、出会えて良かった!

自分以外はすべて「他者」。「他者性」を原理原則として夫婦家族、社会を考えると、違って見えるから嬉しいなあ。

本文より(一部簡略化):心を清く保って毎日お行儀よく生活していれば神様が幸福を運んでくれる。そんなのは夢物語であることは現実に生きる誰もが知っている。
「生」は楽しさや素敵さや歓びに向かって現実の中でしっかりと形作られているときに「幸福」を直感できる。
「他者とのつながり」の中に身を置いたときに、必要以上にたじろがない「自己」というものの核が大事。

他者からの称賛や承認依存が強かったり、或いは他人との表層的な比較でしか、優位性を感じられないなんて寂しすぎる。まだまだ私も理想に向かって、変わっていけるかもしれない。
菅野先生、ありがとうございます。ご冥福をお祈りいたします。

レビュー投稿日
2019年4月29日
読了日
2019年4月27日
本棚登録日
2019年4月27日
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