酒浸りの三文文士、大久保は鬱々とした日々を過ごしていた。ある日、新聞記者の関が尋ねてきて、突然怪談話収集を手伝えとのたまった。恐ろしいものに滅法弱い大久保は、何とか断ろうとするが、否応なしに付き合わされる羽目に……。
大柄だが気鬱の酷い大久保と、中背だが横暴な関二人で織りなす凸凹コンビのややギャグよりの怪談収集話かと思いきや、思ったより一つ一つが重たい。他の怪談収集物のホラー小説の様に背筋が寒くなるほど恐ろしい怪談話は出てこない。どちらかといえば読了後にどこか物悲しく、物寂しくなるような話ばかりだった。人の内面に焦点を当てた怪異が多くどの話も人の情や喪失感が伴う。怪異物、怪談収集物で久しぶりに感傷的な気分に。登場人物の心情描写が細やかで、人間味あふれていてとてもよかったなぁ。大久保のうまく生きられない苦しみも、明るみになった関の苦しみも手に取るように分かるので感情移入してしまった。続編も勢いで買っておいてよかった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説(ホラー、怪奇、怪談)
- 感想投稿日 : 2020年9月22日
- 読了日 : 2020年5月2日
- 本棚登録日 : 2020年9月22日
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