李龍徳の信条告白のような作品だ。
梨花に語らせた、彼女の文学への信仰は李さんのものそのものではないか。
それを裏打ちするかのように、物語は結末へとなだれ込む。
世界は腐っている。
腐らせているのは私たち自身だ。
そして私たちは非力だ。
理想主義はいつだってむず痒い。
理想で現実は変えられない。
私たちはそれほど賢くない。
それでも、世界に一石を投じ続ける。
その波紋がなにも起こさないとしても。
それが次の何かにつながると信じて。
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日本人のわたしには〜という感想の貧弱さ。
そういうカテゴライズの暴力性をこれでもかというほどの筆力と熱量で見せつけられてその感想に至るのであれば、内なる分断の線に無自覚すぎます。
この小説が描くディストピアは、今の私たちの社会と決して遠くない。むしろ、一つ何かきっかけがあれば容易に傾く。
橋下徹をはじめとする維新の連中の、威勢の良い空虚な言葉を並び立てるものがなぜかテレビでは重用され
書店には嫌韓本が並び、ネット番組•SNSには目を覆うようなヘイトスピーチが溢れ
小池百合子は関東大震災時の朝鮮人虐殺を否定するかのような姿勢をとりつづけ
朝鮮人学校の前で信じられない罵詈雑言を浴びせかける大人たちがいる、さらにはその男が都知事戦であれだけの票を獲得する、この日本で。
なにができるか
なにをしなければならないか
1人の人間として、考え続けることしかできない
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年3月9日
- 読了日 : 2022年3月9日
- 本棚登録日 : 2020年11月9日
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