終りなき夜に生れつく (文春文庫 お 42-6)

著者 :
  • 文藝春秋 (2020年1月4日発売)
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本棚登録 : 786
感想 : 43
4

「夜の底は柔らかな幻」のスピンオフ作品。真紅の表紙がとても美しい。この本を手にしたい。まずそこに魅かれた作品でした。

「夜の底」で最後に恩田さんに振り落とされてしまった人間としては何とかすがる先を探してしまいます。そんな疲れた心を癒す作品がこれでした。800ページを超えても判然としなかった謎の数々があっけなく解決します。明かされなかった名詞の意味が明らかになります。『ソク』と『フチ』、こんなにもわかりやすい説明、本編でしてよ!とちょっとクレーマーな気分を抱くことになる、読むほどに納得感のある「夜の底」の解説本的なストーリー。

4つの短編から構成されていますが、それぞれ、
〈砂の夜〉『少女が宙に浮かんでいる。』一気に「夜の底」の世界に引き戻してくれる秀逸な一文。軍勇司と須藤みつきのアフリカでの医療ボランティアでの活躍。『あたしが先生を守ってあげる。』という言葉がとても印象的。

〈夜のふたつの貌〉葛城晃と軍勇司の出会い。『意識下にある願望や真実は、人の口を使って顕れるのだ。』ゾクゾクするような驚愕の視点。「夜の底」で抱いた葛城晃の印象がくずおれる瞬間。

〈夜間飛行〉葛城晃が入国管理官になるまでの心と身体の道程。そして、あの「彼』との再会と別離。『噂ってのはさ、どんなガセネタでも、どこかに一粒くらいは真実が含まれてるものなんだ。』そう、火のないところに煙は立たない。そして、葛城晃が別人格に感じるエンディングのある意味の爽やかさ。

〈終りなき夜に生れつく〉途鎖を離れた首都で起きている連続殺人事件。あの大物の彼が登場します。『古くて新しい対立。どちらが新人類であるのか。どちらが人類の覇者であるのか、という対立軸。』古くて新しいこのテーマに、『新人類』の脆さを前面に押し出した描き方が新しい。でも、ニュータイプとオールドタイプはいつの夜もいがみ合い、自らの存在意義をかけて闘うしか道はない。誰が描いてもこの結論。『悲しいけどこれが人間なのよね。』

永遠に終わることのない、終りなき夜を生きて行くしかない者たちの苦悩。特殊な能力を持って生れてしまったが故の苦悩。そして、能力を持たない者との間に生まれる相剋。
本編+スピンオフという物量を投入しても描きたかったもの、恩田さんの強い熱意・想い、そしてこの世界観への深い愛情に触れた気がします。トータルで見て素晴らしい作品群でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 恩田陸さん
感想投稿日 : 2020年2月16日
読了日 : 2020年2月15日
本棚登録日 : 2020年2月16日

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