その昔、ハリウッドで

  • 文藝春秋 (2023年5月26日発売)
4.17
  • (7)
  • (7)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 145
感想 : 11
5

映画と合わせて面白い!!
ノベライズというより完全版だ‎߹ㅁ‎߹)♡



まず、映画を観ました。

シャロン・テート殺人事件に関する映画だと思っていたので、事前にチャールズ・マンソンファミリーが関わる事件の概要を軽くおさらいしてから鑑賞しました。

いつものタランティーノ独特のタッチで描かれる世界観が大好きで、うんちくと長セリフと音楽を堪能しました。
——が、シャロン・テート事件は、映画のほんの片鱗にすぎず、この映画は主人公リック・ダルトンの為の映画です。

この架空のキャラクター(リック・ダルトン)は年齢を重ね、俳優としての岐路に立っていた。
バカにしていたイタリア西部劇(マカロニ・ウエスタン)への出演の話に落ち込むリック。
専属スタントマンの相棒クリフ・ブースは、元軍人。
妻殺しの噂を持つ魅力的で強いブロンドの男。
隣人のシャロン・テートは、夫のロマン・ポランスキーと共に、リックの隣に越してくる。
時は1969年。
ベトナム戦争真っ只中、ヒッピーがごろつくハリウッドで起きた話である。

小説は、映画と結末が違います。
映画の見せ場は、なんと言ってもラストのエグい格闘シーン。
小説にはありません。

ひとことで言うと、タランティーノのこだわりが詰まった小説です。

映画はリック、クリフ、シャロンの様子が同じくらいの配分で描かれていますが、小説は断然リック愛が濃厚。

『対決ランサー牧場』という映画でリックが演じるケイレブ・デカトゥーが「つけ髭」を付ける演出がどんなに深い意味をもち、影響を及ぼすのか、映画の中の些細な一面と思っていた小さな拘りをタランティーノ独特の深掘りトークでお腹いっぱいになります。

なんと言っても共演の可愛い女の子役、トゥルーディとのやり取りが重要で、彼女の存在でリックが自信をつけていく様子が、たまらない。
ここがメインの映画だと思う。

映画と違い、クリフのクソ男っぷりな描写が多く、愛犬ブランディとの出会いや、猟犬としての実績などが詳細に描かれていて、小説を読んだ後映画を見直しましたが、最初と印象が全然違いました。

マンソンら、ヒッピー達のからみで、この後どんな事件が起こるか……という意味ありげな様子も、好きな流れでした。

この時代の映画や俳優の名前がバンバン出てきて、観たくなります。
『対決ランサー牧場』ももちろんだが、ロマン・ポランスキーの映画『ローズマリーの赤ちゃん』は観たことがないので、是非観たい。
場面に出てきた鑑賞の仕方を確認したい。(寝室の中で電話をしている老婦人をローズマリーがちらっと見るシーン。ロマンが指示したカメラ角度だと、カスタベット婦人の全身は映らず、ドア枠の左部分に体が隠れてしまった。シャロンは、何故ロマンが角度を変えたのかわからない。上映の際理由が判明するのだが、シャロンがロマンの事を天才だと再確認した瞬間だった。)

タランティーノの映画への愛が伝わる一冊でした。
小説を読んでいる最中も世界観に浸り、幸せな読み心地でした。映画を流しっぱなしにしておきたい。大好きです!!(〃´-`〃)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月23日
読了日 : 2023年10月23日
本棚登録日 : 2023年10月23日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする