阪急電車 (幻冬舎文庫)

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本棚登録 : 35203
レビュー : 4180
著者 :
kanegon69 さん  未設定  読み終わった 

「阪急電車」という小説。のっけからすごいタイトルじゃないですか。一私鉄の名前をそのまま小説のタイトルに使うなんて。関東で例えたら「東急田園都市線」なんていう名前が小説のタイトルになっているのと同じわけです。一体何事か、と思いつつ、最初の頁を開くと、そのえんじ色の車体にレトロな内装がうけて、若い女性から「かわいい」と好評、女性観光客から「オシャレ!」とびっくりされるとある。えっ ちょっとまって、、大学卒業までずっと乗っていた阪急電車。(私の場合は京都線)オシャレ!かわいい! って感覚はなかったなぁ。茶色の電車でなんや垢ぬけん色やなぁって思ってて、お腹がすくと、チョコレートみたいな電車やなぁと勝手に思ってた。そうか、オシャレか!いま思い返すと、いろいろ脳内で比較すると、、そういわれればそうやなぁ。と思ってしまった。あまりにも身近にあったものが題材になると、意外とその価値に気づいてないもんですね。

この小説、すでに映画化もされており、小説の評判がいいことは知っていました。ただ、何がそんなによいのか、すごく楽しみにとっておいた小説です。なにせ有川さんですから、どんな風に料理してくれたのかワクワクしていました。

物語は、阪急今津線というマイナーな路線の8つの駅を往復する間の、さまざまな登場人物の物語が描いてあります。本当にすっごいなと思ったのが、この登場人物のそれぞれの話が各駅に進むにつれて次々に入れ替わっていくのに、同じ電車内の出来事として接点が実にうまく描かれており、「あぁ、あのカップルの話どうなったのかなぁ」と思っていると、別の登場人物の話の中で視点を変えてまた登場してくる。これが入れ替わり立ち代わり登場してきて、それぞれがそれぞれの人生の一ページの中で、同じ電車の空間の話として絶妙に紡いでいかれます。そして電車が往復して再び宝塚駅に戻ってきたときに、見事に複数の話が素敵な結末を迎えます。

思わず「うまい!」と唸ってしまう、素晴らしいストーリ―構成で、あぁ、そうか、だから私鉄の一路線の話にしたんだなと納得します。また、それぞれの話がとても素敵で、有川さんお得意の甘々のラブストーリーあり、関西のおばちゃんの話あり(関西のおばちゃんはほんまにすごいんですよ!)、ひどい目にあった女性の話から、女子高生の話、まぁ、笑ったり、怒ったり、共感したり、照れたりと、私は見事にいつもの通勤電車の中で、あっちゃこっちゃ感情が飛びまくり、脳内はいつの間にか阪急電車の中に乗せられているようでした。 笑

こういう小説が書ける発想力、複数の話を次々に視点を変えながら紡いでいく絶妙な手法、やはり有川さんはすごい作家です。エンディングもほっこりさせられ、あぁ、阪急今津線に行きたい!って思わせる、惹きつけ力も抜群です。連続短編をこれだけうまく紡いだ小説は初めてですね。素晴らしかったです!

レビュー投稿日
2019年4月25日
読了日
2019年4月25日
本棚登録日
2019年4月25日
5
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