29才、退職までリミット1年の受付嬢、美雨。
同居を始める売れないアラサー芸人、享。どちらも端から見たら人生の「崖っぷち」。
勢いと若さで進んできた日々も終わり、人によっては人生の節目ともいえる時期。人生の設計図を見直す時期。
世間並みの生き方を選ぼうなんて毛頭思ってません。
芸人を花火に例えたのが印象的です。何百何千回と稽古しても輝くのは数分。才能果てない世界で若手からの追い上げも半端ない。「バケモン」のような上には上がいやというほどいます。
一方で、十万ほどの稼ぎがあればずっと放課後の気分でいられる、笑って暮らせる気楽な面もあります。
これでもかと世間のレールから外れて生きる姿が描かれています。でも、悲壮感はありません。
パラシュートでなく、パラソルで笑いながら落ちていってやるという空気感が物語を包みこんでいます。明るくて軽妙なやりとりで読みやすいです。
私の知らない世界。目まぐるしく展開する出来事に見いってしまうのです。
「夢や目標は呪いのようなもの。失うのも諦めるのも辛い、でも解放でもある。」芸人を諦め去っていくネバーくんの描写は心に刺さりました。
これだけの熱量をもって生きている人間たちだからこそ、日々を流されるように生きている美雨は魅かれていったのかもしれません。
ここに出てくる人びとは、誰一人手堅く生きてる人はいません。むしろ我が道を笑いながら進んでいる。最後にこのままみんなでお好み焼き屋、たこ焼き屋でもやろうかと話し合ってます。こういう生き方もあるよなぁと読了しました。
ちなみに私が大学進学を決めた日、同じ部活の友だちは警察官合格を蹴って大阪NSCへ行きました。
たまに帰省したときにすごく大変なんだろうなぁとひしひしと感じられました。同期会の写真見せてくれたら「二丁拳銃」が写ってました。すごっ。そんな彼は30を前に転職、今、会社員をしています。人生色々ですね。
- 感想投稿日 : 2022年9月25日
- 読了日 : 2022年9月25日
- 本棚登録日 : 2022年9月7日
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