ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

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本棚登録 : 3906
レビュー : 589
著者 :
73chさん 2010年に読んだ本   読み終わった 

「ニシノユキヒコ」という1人の男の姿を、彼と関わった10人の女が振り返る。
愛し合っているはずなのに、決して距離が縮まらないもどかしさ。いつか離れてしまうと気付きながらも、止められない気持ち。そんな繊細で切ない描写が素晴らしかった。

彼を語る10人の女性たちはみな、自立していて洞察力に長け、賢い。そんな女性たちでさえ太刀打ちできなかったニシノユキヒコという男。
でもわたしは、彼はどの恋愛も本気だったし、目の前の女性を愛し抜こうと誰よりももがいていたように感じる。

タイトルに「冒険」とあるように、彼はずっと、自分自身を探していたのではないかな。
そしてそれを見つけ、愛してくれる女性を求めていた。
だけど彼は生涯孤独だった。
彼を心底理解できた女はいなかったし、彼自身も、最期まで自分を理解することができなかったんじゃないかと思う。

でも「草の中で」の山片、「ぶどう」の愛、「水銀体温計」の御園に対しては、彼は弱くてもろい部分を出した。彼は自分に惚れない女に対しては、心を許すことができたのかな。彼女達にはどことなく、自分と似た部分があるから。

そして他の女性たちにおいては、死んだ姉とその娘にダブらせて愛したのかもしれない。

わたしはニシノユキヒコのことを「女たらし」だなんてちっとも思わなかった。
苦しくて、情けなくて、ものすごくいとおしい。

レビュー投稿日
2012年6月20日
読了日
2010年4月7日
本棚登録日
2012年6月20日
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