悪い夏 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2020年9月24日発売)
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感想 : 548
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染井為人さん著「悪い夏」
第37回横溝正史ミステリ大賞受賞作品。
自分にとって作者の作品は本作品で5作目になる。映画も来春公開予定との事。

物語は生活保護受給者を支援するケースワーカーの守が不正行為が渦巻く闇の渦に飲み込まれていく物語。
今回の物語もテンポが抜群に良いので展開が早く、それゆえかなりのドタバタ劇に感じられる。ひとしおケースワーカーとして真面目に職と向き合っていた守がどんどん渦中に引きずり込まれていく様は未来という階段を落ちていく様でもあった。一瞬で転落する人生ではなく、一つ二つと微妙にずれていく綾が見事に描かれており最終的にもう戻れない、奥深い所まで落とされてしまう。

他の登場人物達が見事に異様で、理性と感情に乏しい淡白な人々ばかり。解説にもあったが分類すれば「ワルとクズ」ばかり。
典型的に金や欲ばかりが蔓延っていて自分には最終的に満足のいく内容及び結末ではなかった。作品の重量感としては至る所で軽さと薄さが目についてしまう。
逆の意味でこういう社会派作品には重量感が伴ってこそ読み応えがあるのだと再認識させられた。

面白い題材だった為、読んでいて面白かったがもう少し社会的な核心があってほしかったと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年11月27日
読了日 : 2024年11月27日
本棚登録日 : 2024年11月22日

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