新しい「生きづらさ」の小説。
単に入れ替わったからだと、誰が言えるだろうか。
高校生の男女が入れ替わる。
ファンタジーなんかじゃなくて、もっとずっと現実的で、ひりひりするくらいの切実さだった。
入れ替わりものだけど、生きづらさがリアルで、いたって普遍的なテーマが描かれていた。
入れ替わりに限らず、選べない運命や人生に立ち向かうすべての人に贈るエール。
君嶋彼方さん。てっきり女性だと思って読んだけれど、後で調べて男性だと知って驚いた。
が、もはや性別は関係ないと諭された気がする。まなみと陸は、性別という枠組みを超えて、懸命に自分の人生や運命に向き合っている。
水村の体である自分。自分の体である水村からいくつも優しさをもらって、泣きそうになるけれど、これは水村の体だから、水村のために泣かない。
未読の人が読んだら何を言っているのかきっとさっぱりだと思うけれど、その気持ちが切なくて、だけど共感しかできなかった。
面白かった。
入れ替わりものって使われ尽くしてきたし、この世に小説ってほんとに数えきれないほどあるけれど、それでもまだ描かれてない物語があるんだなと感嘆した。
改題もすばらしい。『君の顔では泣けない』。まさにこれしかないベストなタイトル。
集まる喫茶店の名前が「異邦人」というのもとてもよい。
おすすめです。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
KADOKAWA
- 感想投稿日 : 2021年12月14日
- 読了日 : 2021年12月14日
- 本棚登録日 : 2021年12月14日
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