メタモルフォーゼ (手塚治虫文庫全集)

  • 講談社 (2011年7月12日発売)
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メタモルフォーゼ

「すべていつわりの家」が圧巻。何よりも戦争と核兵器を憎み、神仏をも恐れなない手塚の真骨頂。

手塚は平和の問題でハッキリものを言うだけでなく、収入源の漫画作品、表現領域として大切にした芸術領域のアニメーション(手塚の言う実験アニメ)、その両方で、戦争や殺人兵器を賛美する作品は作らず、それら作品で積極的に戦争、核兵器を批判し、おちょくった。「すべていつわりの家」はそのエッセンスであると思う。

全面核戦争のただ一人の生存者である少年を引き取り育てる悪魔夫妻のまだ若い奥さんの神に対する言い分「あんなものに・・・」が凄く冷めている。戦争で酷い目に逢った人でないと書けないと思う。

補遺
「ロボット、異星人、悪魔、魔女、異形、政治犯・・・そう蔑まされた、人間扱いされない、最も虐げられた人々こそ最も優しい美しい心を持っている。」これが手塚治虫の思想だと思う。
手塚は幼少時から宝塚歌劇に入り浸る程の筋金入りのお坊ちゃんの出だったが、戦後一貫して虐げられた庶民の語り部だった。
この辺はやはり筋金入りのお坊ちゃんの出、つまり世襲の大工場主であったが、虐げられた人々の側に立って奮闘した、エンゲルスに似ていると思う。

クチでは戦争反対、環境保全を言って見せるが、その作品で腹の底では戦争や殺人兵器が大好きな事を正直に表現している宮崎某とは大違いである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年5月6日
読了日 : 2022年5月23日
本棚登録日 : 2022年5月6日

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