嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか

  • 文藝春秋 (2021年9月24日発売)
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2022年大宅壮一ノンフィクション賞受賞
2022年講談社ノンフィクション賞受賞
2022年新潮ドキュメント賞受賞
2022年本屋大賞ノンフィクション本大賞候補

僕のなかではノンフィクションの最高傑作と言っても過言ではない。ただ野球好き、落合好きだからそのような評価になるのだろうかと自問… 野球に興味がない人が読んでみてもピンと来ないかもしれない。でもブグログの点数や各種文学賞へのノミネート状況なんかを考えるに僕の主観的評価もあながち間違ってもいないのかなと。

ロッテオリオンズ時代の落合博満は僕の中での大ヒーローだ。ヒーロー度合いはあのイチローの比ではない。あくまで僕の主観だが。

当時僕は少年野球に打ち込んでいた。パ・リーグなのでテレビ中継はほぼなく生で見る機会はあまりなかったが、なんと言っても三冠王バッターはかっこよく夢があった。また日本人選手初の一億円プレーヤーでもあり別の意味でも夢があった。落合の年俸に関しては盛んに報道されていたのが懐かしい。また当時プロ野球ポテトチップスの選手カードを集めていたが落合を引き当てた時の感動は今も忘れない(笑)

バットを真ん前に伸ばし投手とのタイミングを取る独特の打撃フォームやボールをギリギリまでひきつけてのスイングはまさに神業だ。それほど大振りでもないのに左右に打ち分けてスタンドまで運ぶバットコントロールはもはや芸術とさえ言える。

そんな落合の監督時代の8年間の実像に迫った元スポーツ新聞記者の渾身のノンフィクションが本作だ。

勝利のためにあらゆるものを犠牲にした揺るぎない信念の持ち主。プロ監督としても実際に抜群の実績を残したのも実に落合らしい。 

本作の最終章は特に圧巻だった。
2011年秋の監督退任(事実上の解任)発表後からの驚異の15勝3敗2分の成績での奇跡の逆転ペナント制覇の真相は読んでみてのお楽しみだ(笑)

理解されず認められず、怖れられ、嫌われることも落合は力にしてきた。風聞に惑わされず、万人の流れによらず、毀誉褒貶をものともせず、自らの価値観だけで道を選ぶ男。それが落合博満だということを知る。

願わくば、どこの球団でも良いので、監督落合の姿を再び見たいと思うのは私だけではあるまい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2022年8月24日
読了日 : 2022年8月22日
本棚登録日 : 2022年7月24日

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