タイトルはシンプルに「結婚」。結婚詐欺師の男、騙される女たち、その近辺にいる男女たちが順に語り手となって話が進む。
私も昔はこんな男に騙されるわけがないと思っていた。でも今は、いいや気づかぬうちに騙されてしまうことがある、と分かるようになってしまった。スマートで母性本能をくすぐるのが上手で何せ女を喜ばせるのが上手い男の、ちょっとした人間臭さや至らなさ。そうしたところが彼の計算外のタイミングでふと漏れる瞬間。その瞬間に、それまでいくらかあった半信半疑な気持ちに目を瞑ってしまうようになるんだよなぁ。あと、自分が騙されたという事実を認めること、それを他人に知られることで自尊心が傷つけられるのが怖い気持ちが、もはや必死に彼へとのめり込ませるのだと思う。
説明しすぎない描写により想像力を掻き立てられるがゆえにそっと背筋が寒くなるところもあり、余韻の残る作品だった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文学
- 感想投稿日 : 2016年2月6日
- 読了日 : 2016年2月5日
- 本棚登録日 : 2016年2月6日
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