人を、殺してみたかった 名古屋大学女子学生・殺人事件の真相

  • KADOKAWA (2015年9月14日発売)
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当初、県警の捜査員たちは、遺体が発見される前に観念し、供述をはじめた彼女を見て、取り調べもスムーズに終わるものと考えていたという。
ところが、淡々と語られる供述の内容や、次々と判明する過去の事件が、彼らの想像を超えていたために、慌てて警察庁などと対応を協議することになる。
「国立大の理系女子だけあって、受け答えはしっかりしているし、理にも適っているんだが、話の内容が半端じゃない凄まじさなんだ。あの娘には人が死ぬことへの恐れや崇拝する心がないんだろう」と語るベテラン捜査員の話を聞きながら、著者はこの事件に2つの疑問を抱く。
なぜ彼女は毒殺を選ばなかったのか、「人を殺してみた、かった」とはどういう意味か?

はやくから薬品の収集に興味を持ち、中学・高校と親しい友人に毒を盛り、今回の犯行現場にも多数の毒劇物を保管していた彼女が、実際に犯行に用いたのは、薬品ではなく手斧でありマフラーだった。
また、自分のことを”俺”と語る彼女の不思議な供述。
「俺の気持ちは『人を殺してみた、かった』。人を殺す体験をしたけど、本当はしてみたかっただけ。だから、他の人たちとは少し違うんだ」。

著者が事件の動機や背景に迫ろうとすればするほど、読者はいっさいの常識の通じぬ様に戦慄し、彼女を少しでも理解しようとする作業そのものに嫌悪を覚えるため、おのずと本書そのものへの評価も厳しくなってくる。

著者は背景を調べるうちに、甘やかし過ぎ放任して育てた家庭や、外聞を気にして手を打たない学校や地域警察などが、彼女を”不可解な殺人者”に変えたと結論づけている。
また、酒鬼薔薇のような性的サディズムではなく、化学に強い関心を持つ”知的サディズム”を彼女に感じているようだ。
ただ、そもそもサディストというのは犠牲者の苦痛を楽しむ人たちで、そうした苦痛や心情に距離を置き感じとろうとも一切しなかった、かつてのドイツのメンゲレ医師を想起させた。

高校時代の同級生が語るように、彼女は明るい性格で友人も多く、クラスのムードメーカーだったという。
頭が良いだけでなく陸上にも打ち込み、クラスで問題が起こると率先して行動を起こすようなリーダーシップもあったという。
魅惑的な説得力、共感の欠如、精神的な強さ、一点集中力、恐怖心の欠如などはどれも、サイコパスの典型的な特徴で、読みながらそれを強く感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年2月9日
読了日 : 2016年3月13日
本棚登録日 : 2018年2月9日

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