天国の囚人 (集英社文庫)

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本棚登録 : 127
レビュー : 19
制作 : 木村 裕美 
ABAKAHEMPさん  未設定  読み終わった 

これぞ小説のなかの小説、まさに王道を行く面白さ。唯一の不満は、第3弾の本書が前作に比べて分量が物足りなかったことで、もっと読みたいぞ、サフォン。恨めしいのは、自分の記憶の不確かさで、ちょいちょい脇役やサイドストーリーの巧みな伏線を読み飛ばしてるのではと不安にさせられた。これはもう完結編である次作が出たら、もう一度シリーズを最初から読み直すしかない。はやく次が読みたいとはやる気持ちと、次読んじゃうとこの物語世界も終わっちゃうんだからもう少し先でいいという、二律背反した思いに引き裂かれる。

フェルミンがダニエルを叱るシーンが特にいい。内戦時のことを語らない父を批判する資格はない、と。「父上はね、あの時代に生きることになった大勢の人といっしょで、ぜんぶ呑みこんで口をつぐんだ、それより方法がなかったんです。誰もが、あの痛みを何十年となく胸に抱えて、自分の一生をふいにした。そうすることで、きみや、きみみたいな人たちが生きつづけられるようにです」終戦の日を前に、何でも語り伝えることが推奨される一方で、困難な時代を生き抜いたことにあえて口をつぐむ姿勢を尊重するのも大事ではないかと考えさせられる。

今回もハッとさせられる言葉の数々。
「未来は望んで来るもんじゃない、生きてきた結果としてあるんです」
「思ったとおりですよ。神のほうが、きみのことを信じている」
「男の人って、街角で売ってる焼き栗みたいなもんじゃない? 買うときは、みんなホカホカで、いいにおいがするんだけど、袋から出したら、すぐ冷めちゃって、割ると、ほとんど中身が腐ってるのよ」

レビュー投稿日
2015年12月2日
読了日
2015年7月26日
本棚登録日
2015年12月2日
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