このシリーズは、何の歴史素養もない探偵役の宮田が「あなた、何もわかってないのね」と相方の早乙女からチャチャを入れられながらも、素人らしい素朴な疑問を合理的な歴史解釈につなげていく様子が面白いのだが、今回はそもそもの出発点を「これだけの連続する災い事を崇徳院の呪詛のせいにするのは無理がある」という直感に置いたところで失敗していると思う。そのため焦点が崇徳院なのか西行なのかハッキリせず、配流地の讃岐は訪れないまま、西行の墓の謎はうやむやで、今更感の強い生首トリックと時代遅れの男女の駆け引きで終わってしまった。
香川県の坂出市に行けばわかるが、現地では崇徳上皇は"最恐の怨霊"ではなく"すとくさん"と親しまれ(上皇が暮らした住まいを再現した建物は現在、地域の集会所として使われている)、かつ現地で上皇は殺害された(現場や下手人名も特定されている)と信じられている。宮田が本書で働かせるべき疑問や直感は、ここから生まれるものだと思っていただけに残念でならない。
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- 感想投稿日 : 2018年2月9日
- 読了日 : 2016年11月6日
- 本棚登録日 : 2018年2月9日
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