あの『真田丸』で「関ヶ原を1分で終わらせた」「大河史に残る"超高速関ヶ原"」と話題になった戦いだが、案外的を得ていたのかも。勝敗が小早川秀秋の裏切りによって決したという説は揺らがないのだが、合戦にまつわる様々な通説に新たな解釈が加えられる。そもそも関ヶ原合戦自体の位置づけが異なっていて、家康にとって実は天下分け目の大戦と勇ましく出陣したわけではなく、公儀から排除され、戦う大義名分も何一つないまま、非正規軍の頭目として、改易などの処分を畏れ焦り暴走気味の反石田三成派の諸将に半ば押される形で戦っただけだった。
苦しいのは新たな新説が打ち立てられるわけではないこと。というのも未発見の新資料を元にしているわけではなく、既存資料の矛盾を指摘するなどして選り分けているだけなので、新しい解釈ではより分からない空白部分が広がった印象だ。ただ単に後世につくられたフィクションだと切り捨てるだけではなく、架空の話がいかにでっちあげられ創作されていったかを推理しているのは面白いところ。必ずしも徳川史観に彩られた都合の良い改変によるものばかりではなく、より劇的でスリリングにと、語り伝える上で欠かせない脚色が徐々に加えられたのだ。
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- 感想投稿日 : 2018年2月9日
- 読了日 : 2017年8月24日
- 本棚登録日 : 2018年2月9日
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