スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

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レビュー : 1066
著者 :
たかぎけいじさん  未設定  読み終わった 

東京都内のアパート「スロウハイツ」では、人気急上昇中の脚本家赤羽環と中高生に絶大な人気を誇る作家千代田公輝をはじめとして、漫画家の卵、映画監督の卵、画家の卵たちが共同生活を送っていた。オーナーの赤羽は、芯が強く仕事も出来るが、恋愛になると不器用になる性格ゆえ、同居人から愛される存在であり、他の者もクリエイターならではの好奇心を抱き、互いに刺激し合いながら苦楽を共にしていた。
作家の千代田公輝は若くして大成したが、10年前、彼の作品に影響された者が主犯格として集団自殺を図ったことを機に、数年間作品を書くことができなくなった過去があった。そんなとき彼を救ったのは、コーキの天使ちゃんであった。その者は、本を読んだことのない第三者が千代田ブランドを汚すことを許さず、作品の素晴らしさをマスコミに毎日訴え続けていたのである。謎に包まれたコーキの天使ちゃんであったが、その正体は中学生時代の赤羽環なのであった。彼の作品を心待ちにしている彼女たちに生きる希望をもらった千代田公輝と母親の逮捕、両親の離婚、育ててくれた祖母の死など悲惨な経験をした赤羽環、桃花姉妹を陰で支えていた千代田公輝が時を経て再会したのであった。

最終章までの約700ページが存在したからこそ感動が生まれるのであろう。多くのページを割いて、スロウハイツに住む仲間たちの過去、性格、価値観などを理解し、クライマックスに至るまでの流れを共有することが、最終的にあらゆるエピソードを繋げる材料になっている。換言すれば、筆者は伏線回収が上手く、何百ページも前に登場する何気ないエピソードが次々に繋がりをみせるのである。そういう点で、一気読み必至の書であるといえよう。
コーキの天使ちゃんが赤羽環であったこと、千代田公輝はその人物を知りたくてかつて赤羽環の元を訪ねたこと分かったとき、体に震えが走った。だから、加々美が千代田の悪口を言ったとき激怒したのか、だから千代田公輝が赤羽と仕事で会った時に久しぶりと言ってしまったのか、だから赤羽が暮らしていた図書館にいきなりチヨダ・コーキの作品が増えたのか、だから買ったプラズマテレビをいきなり手放したのか、だから売られるはずのないコンビニでブランド品のケーキが販売されたのか、だから3食クリスマスケーキだったのか…すべてが繋がったとき読者を感動の境地へと誘うことは間違いないであろう。

レビュー投稿日
2018年5月8日
読了日
2018年5月8日
本棚登録日
2018年4月10日
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