はじめは、新卒の明子が赴任した分校がある、昭和の田舎の村の生活が淡々と描かれる。
早く家を出たかった明子は、自分がいなくなり、後妻の義母や義兄弟たちは、清々するのではないかと考えるが、思いがけず父は伊賀の山奥へ赴任する明子にコンパスをプレゼントしてくれた。ずっとそっけない態度だった父が私のことを気にかけてくれていたのか、と意外に感じる。
明子は同僚の千津世先生と分校長と3人で1年から6年までの生徒を担当する。千津世先生は1〜3年生、明子が4〜5年生、分校長が6年生の担任になる。千津世先生は暗い顔でため息ばかり、何かワケがありそうに思う。
4〜5年生はしっかりしていて、慣れない明子を助けてくれるが、朱根だけは、なかなか打ち解けられない。千津世先生がこの学年を嫌がったのは朱根とその父親のせいだった。
村には営林署があり、遠足の時、居なくなった朱根を探して逆に迷子になった明子はそこの職員である空木に助けられる。
空木は明子がカチンと来るようなことばかり言うが、それが後に、ある理由からだったとわかる。
この作者はミステリ作家だからなのか、そういうさりげない伏線を張るのがうまい。読後、もっと読みたいと思ったが、そこで止めた事で、逆に強く印象に残る作品となったのかも。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年3月4日
- 読了日 : 2023年3月4日
- 本棚登録日 : 2023年3月4日
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