詳説世界史研究

制作 : 木村靖二  岸本美緒  小松久男 
  • 山川出版社 (2017年12月3日発売)
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本棚登録 : 636
感想 : 14
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教科書の副読本という位置付けなんだろう。教科書を併用しないと、これ一冊では世界史が完成しない。

多分、教科書の解説にさらに詳述すべきものがない部分は、カットされている。
たとえば、古代ゲルマン社会についての解説はない。従士制と恩貸地制が結びついて封建社会が成立したという解説もない。(旧版にはあったようだ)
また、20世紀以降の文化史もない。アインシュタインの相対性理論とかもない。

教科書の単元、章立てにあわせているのだと思うが、叙述の順序がおかしいと感じる部分がある。
政治的な変遷を長々と記述したあとに、その要因となった社会経済的変化の解説があったりすると、そっちから記述した方が分かりやすいのにと思う。
十字軍の説明は、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、イスラム社会のそれぞれの章に分散しているので、十字軍とは何だったのかがまとめて分かりにくい。

そういう問題は、教科書の副読本という性格を踏まえて、割り切って読むしかない。そうすれば、内容的には面白いところが多い。

しかし、冷戦期の米ソのとった行動の思惑を解説した部分などは、見当違いに感じるところがある。
たとえば、米国がベトナム戦争終結を模索するために、中国との関係改善を図ったという解説は、本当にそうだろうか。むしろ、ベトナムを孤立させる戦略ではないか。実際、ニクソンと毛沢東が並んだ写真をベトナムにばら撒いたというし、ニクソン訪中後も北爆再開しているし、米軍撤退まで1年、サイゴン陥落まで3年も戦争は続く。
ここらへんは、当時の観測をそのまま米国の思惑だと紹介しているだけで、歴史的経過を振り返って再検討しているとは感じられない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養
感想投稿日 : 2020年6月6日
読了日 : 2020年6月5日
本棚登録日 : 2020年4月14日

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