KiKi はね、映画の「ロード・オブ・ザ・リング」も半端じゃなく好き & 気に入っているし、原作本の「指輪物語」もそれを若干上回るぐらい好き & 気に入っているんだけど、映画の中でどうしても気に入らない箇所を1か所だけ挙げるとするなら、ゴンドールの執政・デネソール候の描き方なんですよね~。 映画のデネソール候には偉大なところ・高貴なところがほとんど感じられず、ま、端的に言ってしまえば「性格が歪んでいて、子どもを差別し、権力欲にも取りつかれた尊大でいやらしいオヤジ」に過ぎないように見えちゃうと思うんですよね。
そうであるだけに、いかにピピンがボロミアを慕っていたと言えども、彼がデネソール候に仕える決意をしたのが、お調子者の単なる思い付きに見えなくもなかったりするように感じちゃうような気がするし、仕えたのと同時にず~っと後悔しているように見えなくもない・・・・・・。 特にファラミアが望みのない戦いに出る際に、デネソール候の居室で歌を歌うシーンなんてその最たるもので・・・・。(あの歌は半端じゃなく良かったけれど)
でもね、物語のデネソール候は確かに映画で描かれていた人物に通じる負の側面は持ち合わせているものの、あそこまで「ダメっぽい執政」では決してありません。 そしてデネソール候を狂気に追いやったのは彼が覗いたパランティア(映画でピピンが覗いておかしくなった丸い石)を通したサウロンの思念だったわけで、それと重症のファラミアを前にした相乗効果でさらにおかしくなっちゃったわけで、そのあたりが描かれていないと、どうしてこの危急の時までゴンドールが持ちこたえていたのかがよくわかんなくなっちゃうと思うんですよね~。
この第5巻では再びフロ・サムコンビは姿をあらわさず、人間たちの大活躍が描かれています。 ペレンノール野の戦いは映画でも凄かったけれど、物語の方も物凄い! 映画ではまともなのはゴンドールとローハンの人たちだけで後の人間は全部サウロン側みたいな雰囲気だったけれど、実際にはもっといろいろな人種が出てくるし、ローハンの皆さんがペレンノールに辿りつく際に重要な役割を果たすガン=ブリ=ガンを筆頭とする野人の登場あり、「死の道」を行くアラゴルンを助けるために駆けつけた野伏の皆さんありで、これがいかに大きな戦いだったのかが「エントのエピソード」と相俟って真に迫ってきます。
映画ではこのペレンノール野の戦いがかなり明るい中で行われていたけれど、物語では真っ暗な中で行われるわけで、そうであるだけに時折垣間見えるわずかな光が効果的です。 もっともこれを原作通りに映画化しちゃうと、あの「ハリポタ」の最後の方の映画みたいに老眼の KiKi には画面が暗すぎて何が起こっているのかさっぱりわからなくなっちゃっただろうけど・・・・・ ^^;
この巻では映画でちゃんと映像化されたいわゆる「見応えのある」シーンが満載で、もっと若い頃の KiKi はやっぱりそっちに気を取られちゃっていたけれど、今回の読書ではメリ・ピピ・コンビに思わず引き寄せられました。 パランティアを覗いてしまったことによって、これまでず~っとメリーの後をくっ付いていた感のあるお調子者のピピンが独り立ちする様(さま)に、そしてまずはガンダルフ・ピピンに置いて行かれ、次いでアラ・レゴ・ギムに置いて行かれ、さらにはセオデン王にまで置いて行かれそうになった中で必死に自分の居場所を作ろうと頑張るメリーに思わず感情移入してしまいました。
そして「かかる戦いでそなたは何をしようというのか?」とセオデンに問われたことの真実の重さを実感し、それでいてナズグルの首領と対峙しているエオウィンを助けるために勇気を奮い起こしたメリーの姿は本当に感動的でした。 映画では観た目の恐ろしさ以上にはこのナズグルの首領と渡り合ったエオウィン & メリーの受けた傷の深刻さは伝わってはこなかったけれど、療病院のシーンが「王の帰還」の象徴的な出来事であるのと同時に、彼らの重体度を物語ります。
そして KiKi のお気に入りの二人の会話です。
「あ~あ、僕たちトゥックやブランディバックの一族は高尚なものばかりでは一生暮らせないね。」
「暮らせない。 僕はダメだ。 とにかくまだダメだ。 だがね、ピピン、少なくとも僕たちは今ではそういうものがわかるし、それをあがめることもできるよ。 思うに、自分が愛するのにふさわしいものを愛するのが最善じゃなかろうか。 どこかで始めなきゃならないのだし、どこかに根をおろさなきゃならないんだから。 それにホビット庄の土は深いしね。 だけど、もっと深くもっと高尚なものが存在していることはたしかだ。 どんないなかのとっつぁんだって、そういうものがなければ、とっつぁんのいわゆる『安穏』のうちに果樹園の手入れはできないだろう。 とっつぁんが知っていようといまいとね。 嬉しいことに、僕はそういうものが今は少しはわかっているんだよ。」
KiKi はメリーのこの言葉がそのまま「指輪物語」を読むたびに見つける新しい発見とクロスしているように感じられるし、同時にこれこそが「読書」という最高に贅沢な娯楽の醍醐味なんじゃないかしら?と感じるんですよね~。
- 感想投稿日 : 2012年8月29日
- 読了日 : 2012年8月28日
- 本棚登録日 : 2012年8月29日
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