阿Q正伝・狂人日記 (1981年) (岩波文庫)

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感想 : 6
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いわゆる吶喊。思えば、魯迅との出会いは「故郷」で、教科書だった。なかなかいい作品だったが、陰影のような印象が濃く、はまりきれず。今回、読んだ動機は授業で「孔乙己」の原文を扱ったため。当時の口語で書かれているはずだが、今原文で読むと、現代作品である例えば史鉄生や梁暁声のそれに比べて、読みにくい。 「狂人日記」がおすすめ。序文もよい。竹内好氏の訳も簡潔達意。 魯迅の寂寞が根底か。ある意見を賛成も反対もなく、アパシーもて反応された場合に感じる寂寞。その寂寞のせいで思わず吶喊が口から出る。それがこの作品群ということなのだろう。 ややそれるが、興味を覚えたのはここ。中国の現状と覚醒の必要性の喚起。A.「仮に、鉄の部屋があるとする。窓は一つもないし、壊すことも絶対できない。中には熟睡している人間が大勢いる。まもなく窒息し、みな死ぬだろう。だが、昏睡状態から死へとそのまま移行するから、死の悲しみを感じない。今君が、大声を出して、数人の者を起こしたとしたら、この不幸な少数者に、どうせ助かりっこない臨終の苦しみを与えることになる。それでも彼らに対してすまないと思わぬかね?」B.「しかし数人が起きたとすれば、その鉄の部屋を壊す希望が、絶対にないとはいえないんじゃないか」 

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 文学
感想投稿日 : 2008年2月27日
本棚登録日 : 2008年2月27日

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