ひとつひとつの物語が互いに緩い関連を持った短編の連作でありながら、全体としてはエッシャーの絵画を思わせるような物語の迷宮。
何の変哲も無い街中のケーキ屋から始まる物語は次第に変容を見せ始め、半ばまで読んだらすっかり迷宮世界に迷い込んでいる。
最後まで読んだところで、すでにこの世界から抜け出せなくなっている自分に気付く。
グロテスクな描写が少しも禍々しさを感じさせないこの作家だが、物語自体は確実に読者の精神を侵食し虜にしてしまうような毒、あるいは麻薬を含んでいる。
トラウマを植えつけてしまいそうな樋上公実子によるカバーと挿絵も物語によく馴染んで迷宮のような世界をいっそう際立たせている。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学:現代:小説
- 感想投稿日 : 2013年8月11日
- 読了日 : 2013年8月11日
- 本棚登録日 : 2013年8月4日
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