戦前の怪談

  • 河出書房新社 (2018年3月20日発売)
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本棚登録 : 38
感想 : 2
4

若い頃、著者の河出書房版「日本の怪談」が読みたくて方々の本屋や古本屋を巡ったがついに出会う機会を得なかった。今考えてみれば図書館ででも借りれば良かったのかもしれないが、当時はどうしても蔵書として手に入れたかったんである。
そんな事をしていたから、結局永い年月を経た今頃にようやく田中貢太郎の怪談と相見えている始末。
この本には長い話短い話が取り混ぜて収められている。短い話は聞き書きっぽいテイストが多く、長い話は聞いた話なのか創作なのか判然としない筆致だ。どちらかといえば短い話の方がシンプルに面白い。
しかし、長い話は往時の文化が端々から読み取られて、別の意味で色々な発見があり面白い。この本は戦前の話というくくりになっているが、それが昭和初期なのか大正なのか、もしかして明治なのか判然としないところがある。いつなのかはわからないが、都市生活者は結構夜遅い時間にも出かけて親戚の家に顔を出しているような描写があったりして、昔の人の意外に自由な暮らしぶりに目からウロコが落ちるなど、怪談的内容以外にも得るものの多い読書体験をした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 怪談
感想投稿日 : 2019年3月4日
読了日 : 2019年3月4日
本棚登録日 : 2019年2月21日

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