朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論 (朝日新書)

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レビュー : 42
著者 :
亜綺羅さん  未設定  読み終わった 

借りたもの。
題名が書籍の内容にそぐわない。しかし副題の通り現代の「リベラル」の行き詰り、その原因とこれからについて、考えさせられる内容の濃いものだった。

著者は「若者が右傾化している」という言説を否定する。
そこには「リベラル」の定義が曖昧になっている(ネオリベラルの登場により)こと、オールドリベラル(50代以上)がそれを「反動右翼」「ハシズム」として拒絶し、40代以下はオールドリベラルこそが「保守」と受け止められたためとする。

先の大戦からの復興で経済発展の余地がある世代(50代以上)と、それらがほぼ完了した世代(40代以下)の世代間対立、時代の変化による価値観の違いからの主観の相違ということらしい。
「保守」と思われている阿部政権が「リベラル」以外に政策の選択肢がなく、安倍政権に対抗するため本来「リベラル」であるはずの野党が「右」にならざるを得ないという、掲げている看板と逆転する事態になっている模様。

昔はもっと酷かった……人種差別、女性差別など人権問題から環境問題まで、リベラルは確かに世界を良くした。そのことで敗北する。
善悪がはっきりしている問題を解決した先に残っていたのは、簡単には善悪を決められないやっかいな問題ばかりが残っている。

TV報道における右傾化、ほぼ主義的な思想の支持が高まるのは何故か?
「右傾化」とは何か?
著者は「アイデンティティ」の問題と指摘。
それは知性ではなく、感情、快感によるものだった。

日本における「ネトウヨ」もトランプ大統領を生み出した「白人至上主義」も、主張は違えど根本的な考え方に共通するものがある。
どちらも「アイデンティティ」を(ネトウヨは中韓、白人至上主義は有色人種に)不当に侵害されていると思うことから起きているという。
人種差別と共通する部分もあるが、“他者が劣る”と思っている人種差別と“自分が劣っている(被害者)”という主観の違いから、話が噛み合わないそうだ。

リベラルに求められるスキル――すなわち“知性”――は、全ての人が平等に機会を与えられたとしても、全ての人が会得できるものではない。

リベラルという知識階層に対し、それに至らなかったことで“持たざるもの”であることで、リベラルにより不当に抑圧されるという考え方も絡む。

リベラル理論の閉塞と、そうした者への受け皿に、保守が成り立っている。

ポストモダンの問題点……
トランプ大統領という異形の大統領が立ったのも、新しい切り口からの差別化されたイメージがあったからこそ、と『宣伝会議 2019年8月号 NO.934』( https://booklog.jp/item/1/B07STGYCS2 )にもあった。

ページ毎の注釈にも様々な書籍が紹介されていたが、マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学』( https://booklog.jp/item/1/4152091312 )に通じると思った。私は現時点で未読だけれど。

現代の思想の系譜と、日本においてその行き詰まりの原因を紐解いていく。
共同体主義、多元主義、多文化主義など、各々に相関・対立があり、複雑化している。

読書前、私はタイトルから、朝日新聞の語法問題……リベラルを謳いながらただの反政権で、公平なマスメディアではないことを言及している本かと思った。違った。
朝日新聞を、リベラルな新聞の代名詞として著者は認識しているようだ。

レビュー投稿日
2019年7月21日
読了日
2019年7月21日
本棚登録日
2019年7月4日
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