見えない星に耳を澄ませて

  • KADOKAWA (2020年12月18日発売)
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この世界に何もないと思った時に、
現実から逃れるために死へと向かうのか
現実から目を背けるために幻を作り出すか。
三上先生は自分を含めた現実を捨てた母親の姿を真尋に重ねているように見えるし、
真尋は幼いときから承認欲求を満たす存在として心の支えにしている幻の兄の姿に三上先生を重ねているように見える。
3人への音楽療法を通して二人の傷も露呈していく。
自分の傷を人に話せることはもしかしたら救いになるかもしれない。
見えない星は自分を傷つけた存在でありながら、自分が求めてやまない相手でもある。
見えないものは完璧に美しいもので、それは初めからこの世に存在しないもの、すでにこの世に存在しないものだからこそ自己完結して美化することができる。
だけど、そんな幻から解放されて、抱きすくめられた温かさで曖昧な輪郭がハッキリしてほしいと願ってしまう。
寂しさを抱えて切実な祈りを抱えている二人だからこそ、一緒にいることができると思いたい。
おばあちゃんとお母さんの関係性も切ない。
母と娘の物語としても差し迫ってくるものがあった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年6月27日
読了日 : 2021年6月26日
本棚登録日 : 2021年6月26日

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