副題に「小説チンギス汗」とあって、チンギス汗の出生にまつわる波乱から始まって幾多の危機を、どうやって、どう考えて乗り越えてきたかというお話。ちょっと前に読んだ、陳 舜臣 さんの作品(チンギス・ハーンの一族)に比べると、こちらはいかにも小説(人間物語)になっており、感情移入させられる面が多々ありました。
ただ感情移入できたのも、モンゴルを統一するまでくらいかしらん。
結局、彼が大虐殺をしたという史実は動かしように無い。特に人質の子供を何千人と殺したあたりから、これをどう解釈するかということになるようです。
森村さんは、そこんところを「大指導者として私情を抑える鉄の意志」で解釈しようとしているみたいで、覇者の道とシンプルライフの選択(父を殺され、部族からも置き去りにされた時は家族9人。貧しくはあったが飢えることはなかった。。。。いまや全モンゴルを統一しても、一家が生きていく上に必要なものは大差ない。)で立ち止まらせたり、拡大再生産(戦いに勝つつど傘下に加わる人間が増え、増えた人間を養うのにさらに領土を拡張しなければならない)の限界を思い起こさせたりと、共産党シンパの森村節か。当の本人は、そんなこたぁ全然考えていなかったんじゃないかと思います。どうなんでしょう?
なお、チンギス汗の記憶力が明細であった点は、後半に唯一箇所あったきりで、「陳 舜臣」版を読んでいなければ、何ともなく読み過ごしてしまっていたでしょうね。
(2007/5/29)
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- 感想投稿日 : 2007年6月4日
- 読了日 : 2007年6月4日
- 本棚登録日 : 2007年6月4日
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