フォークナーの「言語」というものに対する思いが結実した作品。15人の語り手による全59の断片的な独白から成るという特殊な構成をしているが、フォークナーの長編の中では短いほうで、とてもよくまとまっている。
父権的言語秩序のlackを開示するものとしての母Addieがあらゆる意味でこの小説の中心となっており、Addie自身の悲劇と、その母に愛されなかった子供たちの悲劇が読者の胸を打つ。特に母に愛されなかったがためにあまりにも多くのことを見、知ってしまったロマンティックな言語観を持つ「seer」Darlが狂気へ追いやられる様は強烈な印象を与える。一方で、どんでん返し的に用意されたラストシーンのアイロニーも痛烈である。
この小説は是非英語で読んで欲しい。Darlの、そしてその他の人物たちの用いるような悲しく痛ましいbe動詞にはなかなかお目にかかることができないだろう。
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文学関連:洋書
- 感想投稿日 : 2005年12月14日
- 本棚登録日 : 2005年12月14日
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