大学時代に授業で買って積読になっていた本を、10年ぶりくらいに読んでみた。入江さんと言えば、戦後すぐにアメリカのハーヴァードに渡ってずっとアメリカで研究し続けている大歴史学者。その著者が、1960年代の30代半ばで書いた日本外交史。
日露戦争後から朝鮮戦争後までの日本外交について振り返っているのだが、外交の上で基本的に日本は確固たる思想がなく、その場その場の列強の状況に左右されてきたというお話。日本では、人種、宗教、道徳上の原理で外交が動いたことはほぼなく、もっぱら軍事(防衛)、経済戦略上の状況に応じて動いていた。唯一、思想的に統一したものが出来上がったのが、太平洋戦争においての「大東亜共栄圏」構想だったが、これとて資源確保という経済的大前提があったうえで、アメリカがドイツのソ連侵攻によって想像以上の対日強硬路線をとってしまったという状況からきている。外交上の思想がないというのは、よく持て囃される石原莞爾についても例外ではない、と入江先生は指摘している。最終章では、今後日本は新しい外交思想を作り出していくべきとしている。ここで入江先生が言っているのは、南北問題などが念頭にあるのだろうが、結局、その後の日本外交には新思想など出ることもなかったというのが現実ではなかろうか。安倍政権とて、中国の強硬政策に振り回されて反応しているだけに思えるのは気のせいではない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史
- 感想投稿日 : 2014年1月1日
- 読了日 : 2014年1月1日
- 本棚登録日 : 2014年1月1日
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