大人への条件 (ちくま新書 117)

  • 筑摩書房 (1997年7月1日発売)
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感想 : 10

大人になれない子供について論じた本。なぜ、大人になれない子供が、近代においてでてきたのか。そして、この時代に大人になるためには、何が必要なのか。そうした問いに、筆者の自身の体験を掘り下げ、答えようとしている。この問題には、たとえば、家庭内暴力や拒食症といった精神病理がある。そうなってしまう理由は、この前まで実家に暮らしていた私にとってなんとなく理解できる。ややもすると、 家庭での団欒は、閉鎖的な空間において一挙手一投足を監視されているような気分になる。それは愛という感じもあるのには間違いないが、こと自立という観点においては、障害になりうる。家事洗濯がされること、金を使うことが当たり前という何かを与えられるという感覚が植え付けられる。その結果、他人に何かをしてもらうことを軽んじてしまう。この社会性のなさは、家族外の人との軋轢を生むことになる。
ところで、クリエイティブな人は子供っぽいというが、他人に依存しっぱなしでは、なにかをつくることはできない。精神病という観点から創造性について検討した話の中で、河合隼雄は、創造的な人は意外と他人にどうみられるかを意識していると述べていた。ユーミンも歌っているときに、もう一人の自分が空中から眺めている感覚だそうだ。イチローも同様のことを言っている。つまり、他者からどう見えるかという他者意識と創造性は関連が強いのだ。
本書では大人への条件を、対人コミュニケーションスキルを指していたが、私の考えでは他者意識をもつことだ。社会で一人前と認められるには、他人に対して何らかの付加価値を提供することが必要だ。その付加価値は創造性から生まれる。創造性を発揮するには、他人からみた自分の振る舞い方を把握し、それに対してアクションをとっていくことが大事なのだ。大人への条件は、私なりの考えでは、自身の行いを客観的に評価できる目をもつことだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人生
感想投稿日 : 2015年1月29日
読了日 : 2015年1月29日
本棚登録日 : 2015年1月29日

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