脳と機械をつないでみたら――BMIから見えてきた (岩波現代全書)

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  • 岩波書店 (2013年7月19日発売)
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脳に機械をさして、イメージをもとに機械を動かすBMIに関する研究から脳科学について触れた本。
現状の問題点や状況について知ることができておもしろい。
<メモ>
・BMIにつながった脳は神経回路を構成するニューロン集団の活動を自ら可塑的に変えていく。はじめから準備されたものなのではなく、脳がBMIを用いて操作することを学習することにより、実現される。すなわち「脳が身体を介さず報酬を得ることができるようにニューロン集団の活動を変化させる」ことである。ニューラルオペラントとは行動ではなく、ニューロン活動を強化により、増減させる方法。
・現在のBMIは思っただけでは機械もコンピュータも動いてくれない。長期間の訓練により、人間や動物の脳が機械を操作するコツをみつけて使えるようになる。
・腕の動作を高い精度に予測するには多くのニューロンが必要である。すなわち特定のニューロンに依存するものではなく、ニューロンの集団により表現させている。脳内の情報は分散的であり、集団的であり、平均的あるいは確率的であるといえる。
・脳独特の冗長性があり、これにより、部分的な損傷を受けても影響を受けなかったり、大きな損傷でも回復するという特性を生み出している。情報が特定のニューロンに依存せず、多数のニューロンの中に分散されていることがニューロンの死滅た小さな損傷に対する脳の頑健性をつくっており、そのような脳をもった動物が進化の過程で生き残ってきたのであろう。
・個々のニューロンは例外なく不安定であり膨大な数からなるニューロン集団が動くことで個々のニューロン活動の不安定さを補っている。
・高齢ラットの脳にも十分な学習能力と高い活動が見られることがわかった。
・ニューロンは表現する情報に応じて共に活動したりしなかったりするという、いわば瞬時に離合集散を繰り返す仕事仲間とでもいうべき集団をつくっている。セル・アセンブリという機能的なニューロン集団こそ心の実態であるらしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 脳・学習・心理学
感想投稿日 : 2014年8月3日
読了日 : 2014年8月3日
本棚登録日 : 2014年8月3日

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