教養としてのロースクール小論文

著者 :
  • 早稲田経営出版 (2005年6月1日発売)
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080804購入。080913読了。
この6章に渡る講義録に詰め込まれた思想的歴史的知識が著者の博学さを物語る。話の脱線ももはやこの一つの思想的作品の一部として欠かせない。
<第1章>
個人主義とパターナリズム(愚行権、パターナリズム、2つの功利主義、ロールズ「正義論」、社会契約論、臓器くじ、ポルノグラフィ)
<第2章>
自己決定論の限界(性的自己決定、未成年の売春、出生前診断による中絶、臓器売買、しつけ)
<第3章>
個人主義の発見と資本主義(近代ブルジョワジー、ホモ・エコノミカス、グローバリズム、市場原理主義)
<第4章>
専門家と素人(目的と手段、オルテガ「大衆の反逆」、法曹・医師・エコノミスト)
<第5章>
実力と正義(世界政府、近代国民国家、ハート&ネグリ「帝国」、帝国の再評価)
<第6章>
正義と利益(自然法主義、法実証主義、相対的道徳、トックヴィル「アメリカの民主主義」、中間集団、援助交際、世間)
ざっとまとめるとこんなもんだろう。なにしろ、話の展開の仕方が目まぐるしく、一言で「こう」と言えない。それはそれで本としての完成度は高い。おおざっぱに言ってしまえばこれは自己決定論の検証、専門家の役割、国家の展望、法律における正義について論じた本である。もともと僕は法学部であるし、知的エリートの怠慢に関する問題ついても小谷野敦や西部遇などの著書で知っていた。浅羽氏の著作は割りと読むので、中盤の思想史はおなじみといったところか。自己決定論については前々から知りたかったのでためになった。個々の知識は割りと知っていたが、それを一つなぎにして論じるという手法に圧倒された。この本に出会い改めて再読したい本も見つかった。久々に本と格闘できた気がする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 殿堂入りの書物たち
感想投稿日 : 2008年8月4日
読了日 : 2010年7月27日
本棚登録日 : 2008年8月4日

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