少し歴史が読みたくなって今度はこの本にした。有名な、西郷隆盛と勝海舟による無血開城の二日間を描いた作品。
歴史小説というよりも、海音寺潮五郎氏の研究レポートのような趣もある。様々な関係者の手紙のやり取りなどを引用し、その時間関係から、関係人物の心理的な動きを推測するなどして、歴史の真実はこうであったと証明するかのような、著者の歴史に対する強い思いのある本と感じた。
特に著者は、西郷と同じ出身のようで、西郷の「敬天愛人」の思想に共鳴しているだけでなく、西郷という人間味ある人物にめちゃめちゃ惚れ込んでいることが伝わってくる。本書は、この後に著者が西郷を書いた本の、下準備であったとさえ言われているようだ。
しかし、後世にとやかく評論される(例えば、官軍側の立場からすれば、人のよい西郷が、狡猾な勝に騙された・・などの論)この無血開城について、著者はやはりこの二人の英傑あって、この偉業がなされたと見ているようだ。
自分自身も、勝の並外れた大局観と緻密な構想、実行力、そして西郷の並外れたリーダーシップと寛大さで、この偉業がなされた(市民をいっさい巻き添えにすることなく、大政奉還という革命がなされた)ように改めて感じた。
研究熱心な著者は、二日間の開城のドラマだけでなく、実質的な決着である彰義隊(徳川側の暴徒(笑))と、官軍側の天才的軍師大村益次郎の上野での戦いまでを書いて「了」としている。
一言ぼやくとすれば、これは歴史小説というより、はやり海音寺さんの研究レポート。小説としては読みづらかったなぁ。
- 感想投稿日 : 2013年10月13日
- 読了日 : 2013年10月12日
- 本棚登録日 : 2013年9月22日
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