地名から歴史を読む方法: 地名の由来に秘められた意外な日本史 (KAWADE夢新書 165)

  • 河出書房新社 (1999年1月1日発売)
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大阪生まれだが、現在は東京在住だ。転勤等で何度か居住地が変わることがあった。住所が変わる都度、住所を覚えたが、その住所の地名はどんな歴史があってそうなったのかまでは考えてみたことがなかった。

「地名から歴史を読む」というタイトルを見て、なるほど地名には、その名前が付いた歴史があるんだなと関心がわいた。

まず本書の冒頭で、我が国に「小字」程度の土地の名称が約1000万もあるというのに驚いた。さらにそれ以上細かい俗称は1億以上あるという。その地名にイチイチそうなった歴史があるというのだ。面白い。

1871年7月14日に実施された廃藩置県直後は300県もあった。それも幾つかが統合され、1890年の府県制実施で現在のものに近づいたという。

Wikiを参照してみると、市町村単位の自治体では、さらに統合が進められ、記憶の新しいところでは「平成の大併合」で、かなりの町や村が無くなり、逆に市が増えている。単に地名が変わるといっても、行政区画と考えると、これは大変なことであるなと思うが、それは本書の趣旨ではなかった。

時代小説、歴史小説を読むと馴染み深い旧国名が地名に反映されていることも多い。

現在の地方自治法で、行政が混乱するという理由で、「同名の市は認められていない」というのを初めて知った。それでも「府中市」というのは、東京都と広島県にあり、その例外が認められた経緯なども面白い。

さらにその原則が影響して、河内長野市とか、陸前高田市とかができたという。同じ長野市がたくさんあっては困るので、旧国名を冠にして付けたものらしい。泉大津市、武蔵村山市なんてのもそれだったんだ!

ではでは、その旧国名というのを遡ると、あの「大化の改新」まで遡るという。その時代の行政により、地方豪族が誕生し、例えば吉備氏の所領が、備前、備中、備後となり、筑紫氏の所領が筑前、筑後になったという。

面白かったのは、合成地名。国分寺駅と立川駅の間にできた駅が「国立」だとか、長野県の豊科町は「鳥羽村」「吉野村」「新田村」「成相村」の合併時に頭文字をとったとか。

日本の地名の最古のものは、旧石器時代まで遡るという。そこの自然地形(川、野原、坂、山、谷、海岸、岬の7種類)にちなんでつけられたらしい。それを自然地名というのだそうだ。

荘園と租税から生まれた名称も面白かった。
荘園領主に納める租税が免除されることを「免」という。例えば、宮本武蔵のルーツは新免家だったが、その名はこれから来ているようだ。

さらに、租税を夫役なら夫役だけの一つに絞る免除を「一色」といったらしい。あのオウム真理教で有名になった山梨県の上九一色村は、「一色とされた九つの郷からなる九一色という地域が、上と下に分けられてつけられた」そうだ。

こうしてみると都内にも面白い地名が山ほどある。なぜ「豊島区」なのか。なぜ「一番町」なのか。
「半蔵門」は?「麹町」は?

「小伝馬町」「赤坂見附」「御台場」「高田馬場」「日暮里」・・・意識してみると、地名の歴史はとても面白いものだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 武光誠
感想投稿日 : 2021年2月27日
読了日 : 2021年2月26日
本棚登録日 : 2021年2月26日

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