人は「知りたい」と思う生き物なのに
「知らない方が幸せ」な事実が存在することはとても皮肉だ。

主人公の深瀬が物語の最後で知る事実も
まさにその類のもので、何とも言えない衝撃で幕を閉じます。

主人公の深瀬の彼女の元に「深瀬和久は人殺しだ」という
差出人不明の告発文が届くところから始まる物語。

同様の告発文は大学時代のゼミ仲間である
谷原、浅見、村井の元にもそれぞれ届いており、
4人はその告発文は大学時代にゼミ仲間で行った旅行で
事故死した広沢のことを言っていると思い至ります。

果たして告発文を送ってきたのは誰なのか?

広沢の事故死の真相はいかなるものだったのか?


深瀬は告発文の犯人と広沢の死の真相を暴くために
広沢の地元へ赴き過去を調べていきます。

コーヒーが好きだった広沢、
蜂蜜が好きだった広沢、
野球が上手くてみんなに好かれていた広沢、
深瀬のことを親友だと思っていた広沢。

そんな広沢の死の真相はあまりにも意外で衝撃的でした。

ドラマではこの原作のラストの後も描くとのことだけど
この先は描いてほしくないかなぁとちょっと思います。

2017年4月12日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2017年4月12日]
カテゴリ ★小説

ライターの「僕」が、猟奇殺人事件の犯人に面会に行くところから始まる物語。
女性2人が焼き殺された猟奇殺人事件の裏にある真実とは―?!

冒頭で真相を知ろうとする「僕」に対して
犯人の「覚悟は、……ある?」という問いかけは
自分にも向けられているようでぞっとしました。

犯人はもちろんのこと、犯人の姉や事件の関係者など
取材する相手からは例外なく狂気や違和感が感じられ
読んでいて決して心地よくはないのですが、
事件の終着点が気になってページを捲る手が止まりません。

時折挟まれる犯人からの手紙を通じて
だんだんと犯人の心情も明らかになっていくのですが
途中の手紙の最後の「きみは誰だ?」という言葉から
だんだんと物語は姿を変えていき、
二転三転し、全く意外なところにたどり着きました。

まるごと騙されて、感嘆。
伏線もみごとに回収されててスッキリ。
(実際には物語が物語なのでスッキリ感はないけれど・・・)

じめじめとずっとセピア色の雨が降り続いてるような憂鬱感。
「狂気の沙汰」という言葉がとてもお似合いですが
途中からそんな狂気にどんどん浸食されていくようで
そんな狂気がもしかしたら自分の近くにも、
もしかしたら私にも潜んでいるかもという不安感が後を引きました。

2017年3月8日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2017年3月8日]
カテゴリ ★小説

「魔女の胎動」を読んでからの再読。

2021年8月2日

読書状況 読み終わった [2021年8月2日]
カテゴリ ┣東野圭吾

やっぱり朝井リョウの描く痛さが好きだ。

「若かった」とか「未熟だった」とか都合のいい言い訳で蓋をして見ないようにしていた、あの気持ちやこの気持ちを、目の前にどかんと置かれるよう。

どんなに見ないように、気づかないようにしていても確かに存在していたいろいろな気持ちが思い出されて、胸がちくちく痛みます。

きっと、今と切り離された完全な過去の気持ちであったら、懐古の気持ちだけで済むのかもしれないけど、まだ痛みを感じるということは、大人になっても相変わらず同じところをぐるぐるしているってことなのかもしれません。

完璧な丸にはどうしてもなれない。
もがいてもがいて、妥協を覚えて、たまにはっと気づいて、またもがいて…
自分の形を見つける、まだまだ途中なのかしら。

引用にもいくつか書いたのですが、なんといっても朝井リョウの表現が、私にはとてもしっくりきて、読んでいてとても心地がいいです。

「心地いい痛み」の存在に気づかされる作品。
痛いけど、くせになってしまいます。

2014年5月2日

読書状況 読み終わった [2014年5月2日]
カテゴリ ┣朝井リョウ

涙で文章が読めなくなりながらの読了。
いろんな意味で「容疑者Xの献身」を読み終えた時のことを思い出しました。

喉を詰まらせながら読み終えて、本を閉じて帯を見てまた泣けてしまう。

帯に書かれていた
「悲劇なんかじゃない、これが私の人生」
という言葉に全てが集約されていると思うんです。

そう言えることが唯一で、一番の救い。
その言葉に嘘はないんだと思います。

もうしばらくはそれしか考えられなくって。

東日本大震災以降の東野圭吾作品に込められている強いメッセージも、
相変わらず感じられる一冊です。
知らなかった自分が恥ずかしい。

幸せのものさしは人によって違うということ。
それが人から見たら、たとえ悲劇の一生だったとしても。

タイトルも秀逸です。
祈りの幕が下りる時、何を思うのか。

レビュー書きながら、まだまだ泣けてしまう…。

2013年9月26日

読書状況 読み終わった [2013年9月26日]
カテゴリ ┣東野圭吾

なにがどうとかでなく、ただ単純に大好きです!!
すっごく面白かった!!

大学時代というごくごく限られた時間でしかできないことって、やっぱりあると思います。
私自身も今思えば呆れてしまうくらいアホなこと、たくさんしたなぁと懐かしく思いながら読みました。

全力無意味,全力無謀,全力本気。本気のアホさ…最高です。
こういう話を読むと「男子」という生き物がとてもうらやましくなります(笑)

でも、ただただ楽しかった学生時代の思い出だけに徹しないところがさすがの有川浩作品で、ほろ苦さがスパイスとしてよく効いています。

パラパラと各章の扉絵を先にみてしまわないように気を付けて!
大事なページをうっかり見てしまうにちがいありません。(やってしまいました)

輝かしいけど決して戻れない学生時代。これほどまでに貴重な時間だったとあの頃知っていたら、過ごし方が変わっていたのかな?知らなかったからこそ純粋にただただ楽しめていたのかな?
「もう戻れない」少しの切なさと、「確かにそこにあった」という自信に似た懐かしさを糧に、大人となった今、毎日頑張れるのかもしれません。

余談ですが、こういう呆れてしまうようなアホらしさがたまらなく好きな人には、「学生時代にしなくていい20のこと」「チア男子」(いずれも朝井リョウ)もオススメです。

2013年7月2日

読書状況 読み終わった [2013年7月2日]
カテゴリ ┣有川浩

「スタバ」で「キャラメルフラペチーノ」の「グランデ」を飲みながら、まさにこの本を読んでいて、思わず笑ってしまった。(しかし窓を突き破るにもここには窓がない)

芸人「若林正恭」が大好きで、しかも彼のネガティブな一面(一面と言うよりそれが全面な気もするが)にとても興味を持っていたので、発売日に本屋さんに走りました。

気楽に読める、ゆるいエッセイをイメージしながら読んでいたのに、読み終わってみれば三角折りしたページがあまりに多く、すこし分厚くなってたことに驚いた。胸に響いた言葉も思いがけずたくさんあった。

今の世の中、この社会の中で「生きづらさ」を感じている人は、もちろんその気持ちの大小に差はあれど、少なくないと思います。
そんな人(もちろん私を含め)の背中を押してくれる…というほど力強くはないけれど、倒れないようにそっと背中を支えてくれるくらいのちょうどいい力で、でも確実に元気をくれる1冊です。

もっと自然体で、社会をすいすいと泳ぐように渡っていける人もきっといて、そんな人は得をすることも多いだろうし、かっこよく見えるんだろう。
でも私は、彼のように生きづらさを感じながらも、少しずつ自分を更新して、それでもまだ3歩進んで2歩下がる、くらいのスピードで時には道にも迷いながら社会を渡っていく人がとても好きだ。

2013年5月25日

読書状況 読み終わった [2013年5月25日]

「この先立ち入り禁止」の先に何があるのか、
「見るべからず」にはなにが記されているのか。

人の心は不思議なもので、禁止されると知りたくなってしまいます。
「知らなければよかった」と思っても後の祭り。
知るまでは好奇心を押さえられないのは人間の性なのか。

そんな「決して追ってはいけない」夢幻花―存在しないはずの黄色いアサガオを巡る本格ミステリです。

冒頭で唐突に提示される2つのエピソードと、それに続くストーリー。
ばらばらに散らばっているかのようなパズルのピースが最終的にきちっと1枚の絵を作るところは圧巻です。
そしてその絵を見たときに、読者ははっとさせられます。

この本が10年も経って今、世に出ることに非常に意味があると思える作品。
本には読むべきタイミングがあると思っているのですが、
「天空の蜂」と並んで、今だから余計に響く。

もともと響かなければいけない言葉なのに、
以前であればどこか他人事のように感じてしまっていたと思います。
痛みを知って初めて響く。後悔して初めて気づく。
誰しもが持っている、そんな心。
それは人の性と片づけてしまってはいけないと痛感します。
過ぎてしまったことは仕方がないけれど、今ここにある現実は受け止めなければいけないこと。
向き合い、考えること。そんな大切さを改めて考えさせられました。

2013年4月23日

読書状況 読み終わった [2013年4月23日]
カテゴリ ┣東野圭吾

読み終えたその足でデパ地下に向かい、
そこに並んでいる上生菓子を手にとっていました。
そのくらい和菓子が食べたくてたまらなくなる。
和菓子についてもっと知りたくてたまらなくなる。

日常ミステリものですが、ミステリ自体はとてもライトで、
それよりも登場人物の心の動きとか、
人生の機微なんかに目を向けたくなる作品です。
(変わり者が多いけど)いい人ばかりなので気持ちよく読めます。

そしてなにより和菓子についての薀蓄がたっぷり。
「菓子」というとどうしても「スイーツ」と呼ばれるような
洋菓子に目がいってしまいがちですが、
和菓子というものが日本に長く息づいているからには
もちろんそれなりの理由があるわけで
そのうちの少しを知ると、もっともっとと止まらなくなります。

季節の変化や侘び寂びを慈しむ文化、
美しい日本語の言葉遊びなど、とても興味深いです。

美味しい和菓子と、美味しい抹茶と一緒に、
ゆったりと味わいたい、そんな作品でした。

2013年4月16日

読書状況 読み終わった [2013年4月16日]
カテゴリ ★小説

続編を待ってました!!

相変わらず男性が聞いたらきっとドン引くんだろうな~と思うほどの
あられもない女の真実がたっぷり。
あなたの目の前の可愛い女の子も、
にこにこ笑いながら内心こんな鋭いツッコミいれてるかもしれませんよ。

本当に共感できて面白いのだけど、
その面白さはごく一部でしか分かち合えない。
まして男性になんて絶対に言えません。
だからこそ面白いのかも。

2013年4月16日

読書状況 読み終わった [2013年4月16日]
カテゴリ ★マンガ

「サヨナラだけが人生だろ?」

と聞くと、ひどく悲しいことのように思えますが
中村航が紡ぐサヨナラたちは相変わらず優しくてあたたかです。
(だから宮尾和孝の表紙もいつもながらすごくピッタリなの)

「さよなら」をモチーフにした短編集。
とはいえ、さよならにもさまざまな色があるわけで、
悲しいブルーのさよならばかりではなく
虹色のさよならが詰まっています。

真っ白な新しい明日へ向かう「幻視画」
漆黒の宇宙にきらめく、
「インターナショナル・ウチュウ・グランプリ」
夕陽のオレンジと深緑のカエル「さよならマイル・ストーン」
懐かしい気持ちが甦るビビットカラーの「女子五編」
透き通ったブルーの「さよなら、ミネオ」

そして最後に可愛くてたまらない「ぱぐ ぐぐぐ」

サヨナラだけの人生でも、
それが虹色なら、悪くないかもしれません。

2013年3月24日

読書状況 読み終わった [2013年3月24日]
カテゴリ ┣中村航

通勤電車の中でポスターを見かけて、
あまりに可愛い表紙に惹かれて、また得意の表紙買い。
「カミングアウト」という、何やらスッキリしそうなタイトルもいい。

しかし終盤までは、カミングアウトという言葉の爽快さには程遠い、
それぞれにもやもやと秘密を抱えた人達が登場します。

援交している母親と不仲の女子高生、ロリィタ好きのOL、
独身貴族の課長、虎視眈々となにかを企む主婦…。

みんな私とかけ離れた人ではあるのだけれど、
どこか共感するところがあります。
そしてきっとそれは私だけじゃないんだと思います。

秘密のない人なんていない。
「こうあるべき」という「神話」に
振り回されている人も、少なくないはずです。

「カミングアウト」というタイトルと矛盾するようではあるけれど、
カミングアウトを肯定・推奨するだけではありません。
最終的にそこに見えてくる結末が私は大好きです。

「明日も、ちょっとだけがんばろう」と思えます。

2013年3月24日

読書状況 読み終わった [2013年3月24日]
カテゴリ ★小説

献本でいただきました。ありがとうございます!

仕事柄、帰宅が23時頃になることが多いので、
「深夜特急めし」なんて魅力的すぎるタイトル!

夜遅くに帰ると、そりゃあおなかは空いているのですが
「こんな時間に食べたら即脂肪」と思うと何を食べていいものか…。
それ以前に、一刻も早く寝たいので作ることすら面倒なのです。

そんな仕事帰りの深夜にちゃちゃっと作れる
「超特急」レシピから、少しだけ手をかける「急行」レシピ
(それでも超簡単)まで、使えるレシピが109品と、盛りだくさんでした。
材料が1人分になってるのもすごく良かったです。

あと、余ってしまうことの多いそうめんを使ったレシピも多く、
深夜に限らず活躍してくれそう。

「深夜特急」に合わせて、
中のデザインも電車や駅っぽくなってるところもにくくて、
私としてはお気に入りのポイントでした。

誰かに作ってあげる料理としてはちょっと簡単すぎるくらいだけど、
自分のために作る料理なら、このくらいがちょうどいいです。

2013年3月18日

読書状況 読み終わった [2013年3月18日]

お店を舞台にした日常ミステリー。
既視感のある設定ですが、おもしろかったです。

わざとなのかそうでないのか定かではありませんが
張られた伏線たちが、その違和感で「これは伏線ですよ!」と主張してくれるので、
分かりやすく一緒に謎解きができます。

甘いカフェオレのような謎が続くのかと思えば、
最後にほろ苦い謎も待っていて、飲みごたえ…
いや、読みごたえあったと思います。
カフェで飲むのにピッタリ。
どうしても美味しいコーヒーが飲みたくてたまらなくなる!

お店を舞台にした日常ミステリ作品の入門編という印象が強い作品です。
もっとミステリーを楽しみたい人には「ビブリア古書堂」シリーズが、
人間関係の機微を味わいたい人には「真夜中のパン屋さん」シリーズが、
そして「東京バンドワゴン」シリーズはどちらの人にもオススメ。

2013年2月14日

読書状況 読み終わった [2013年2月9日]
カテゴリ ★小説

「由良三部作」1冊目。

冒頭に並んだ「×」の答えを知った時は息を飲みました。
なんだか、あまりに…。

二部構成になっているうちの一部では、
クラスメイトの「自殺」の真相を2人の男子生徒が暴くのだけれど、
その真相は、とても儚くて理不尽。

二部では、一部で死んだ女子生徒の生きていた頃が語られます。
「さよならドビュッシー前奏曲」もそうだったけれど、
すでにいない人の過去を知るのは、なんとも言えない気持ちになります。
先にある、もう知ってしまっている未来が、
覆ったらいいのにと、そんなことを思わずにいられません。

彼女はあのキャンバスの空白の彼方に、一体何を見てたんだろうな。
それを知るすべがないことが、とても悲しく感じられます。
由良はそこに何かを見つけられるんだろうか。見つけてほしいけれど。

ストーリーとは関係ないんだけど、雰囲気として
深い海の底から、ずっと上を見上げているような気分。
そこから見えるはずの空は彼方、あまりにも遠く
どこまでも広がる青の濃淡は、やがて闇へとつながっていて、
ふと横目には、猟奇的な程、色鮮やかな魚たち。
果たしてここから空を見ることはできるのかな?

そんな気分で三部作最後の「セイジャの式日」を手に取っているところです。

2013年2月13日

読書状況 読み終わった [2013年2月9日]
カテゴリ ★小説

「とんびが鷹を産む」とは果たして嘘か誠か。

読み始めてから読み終えるまで、
ずーっと喉を締め付けられ、目頭は熱いまま、
何度涙で文字が読めなくなったことか…。
泣ける泣ける言うとなんだか軽くなりそうで、
本当はあんまり言いたくはないのだけれど、これだけ泣けるものは仕方ない(笑)

ストーリーそのものに泣けるというのも、もちろんあるんだけれど
全く同じではないにしても、ヤスさんから不器用にあふれる愛を見て、「あ、これ知ってる」という既視感に自分にも与えられていた愛を重ね、
どうしようもなく泣かされてしまうような気がします。

ヤスさんの振る舞いは時に正解とは限らないけれど、いつも全力。
それゆえにいきすぎてしまうこともあるし、
かと思えば言いたいことを言えずに口をつぐんでしまうこともある。
ヤスさん自身が言っているように「後悔しだしたらきりがない」人生は、
みんなそれぞれ形は違えど、同じなんだろうな。

この本はすごく「いい話」なんだけれど、
きれいごとだけではないところも魅力的な作品です。

「とんびが鷹を産む」だと、からかわれるヤスさんだけど、
なんのことはなく、ヤスさんだからアキラなんだろうな。
そんな当たり前のような奇跡が、しっかり存在していることがとても嬉しく思えます。

2013年2月13日

読書状況 読み終わった [2013年2月4日]
カテゴリ ★小説

仕事柄英語関係の本(特に勉強法の)をよく読むのだけれど、個人的に関先生の考え方が1番好きです。すっと腑に落ちます。

関先生の本はもう何冊も読んでいて、どれも好きなんだけど、この本の特徴として特筆すべきは、やはりDVDが付いていること。本だけより、ものすごく分かりやすかった(そして板書が早くてすごい)!
「関先生入門本」としていいかもしれません。これを見て読んで、「あ、この人の考え方いいな」と思ったら、ぜひ「世界一わかりやすい」英語シリーズがオススメです(なんか回し者みたいだな…笑)

英語は暗記が嫌だ。例外が多すぎてうんざりする。単語が全然覚えられない。学生時代から英語は嫌いな教科だった。
そんな「英語嫌い」の人にぜひ読んでほしい本です。

他の本ではなかなか紹介されていない考えに、きっと目からウロコがおちるはず。

2013年1月28日

読書状況 読み終わった [2013年1月28日]
カテゴリ  └英語関係

Twitter、facebook、LINE…。どんどん便利になって、人と繋がることが容易に、また自分を表現する場所も増えてきた今、誰もが気づいてるけど、あえて見ないようにしているような裏側をまざまざと見せつけられるようでした。

ものすごく…痛い。

もしかしたら、前述したようなSNS等を実際にやっていない人にとっては、いまいち共感しがたい小説なのかもしれません。さすがにこんなことはないだろう、と。でもこれ、やってる側から見るとノンフィクションなんじゃないかと思ってしまうくらい、ものすごくリアルです。

見えなくていいものが見えてしまうことで、どうしても比べてしまう。他人の発信するものを見て羨んだり、逆に自分を安心させてみたり。
直接友人には言わないであろう心情の吐露や、自慢を第三者に発信しているようにして、友人にもアピールしてみたり。
うんざりしていても、もはや抜け出すことができない、こんなにも狭くなってしまった世界で、「何者」にもなれずもがき苦しんでいる人がいるのは、まぎれもない事実のように思います。

すぐうしろで誰かがしている噂話を笑っていたら、ぽんぽんと肩をたたかれて、「お前のことを言ってるんだよ」と横っ面を張られるような衝撃を受けました。

すごい小説です。「就活小説」とくくってしまってはダメだと思います。
実際にSNSを活用している方には、痛さを分かち合うものとして。SNSって?という方には、こんな世界があるんだと知るきっかけとしてもオススメです。多少の痛みを伴いますが。

2012年12月18日

読書状況 読み終わった [2012年12月16日]
カテゴリ ┣朝井リョウ

東野圭吾の「○笑シリーズ」はどれもシニカルな笑い満載で、思いっきり「裏・東野圭吾」を味わえるシリーズ(こちらが正体な気もするのだけれど)で大好きです。
ですが、これはそんな「笑シリーズ」の中でも1番黒いというか、毒々しいというか、不気味という…。思わず、「こんなのって…」と苦笑いしてしまう、ものによっては顔をひきつらせてしまうものまで、超~シニカルな短編が9編収録されています。
どれも突拍子ない話なんだけれども、手放しで他人事にはできない感じが、魅力でもあり、不気味さたる所以なのかもしれません。

珍しくあとがきとして、一編一編に対する東野圭吾の解説も収録されていて、まるで言い訳のようなその解説まで面白く、最後まで楽しく読めました。

ガリレオや加賀恭一郎、映像化された作品など、いわゆる有名な東野圭吾作品しか知らない人にはぜひ読んで欲しい一冊。もっと好きになってしまうか、少し距離を置いてしまうか、そんな分岐点にもなり得る一冊かもしれませんが。ちなみに私は前者です。

「欝積電車」
「おっかけバアさん」
「一徹おやじ」
「逆転同窓会」
「超たぬき理論」
「無人島大相撲中継」
「しかばね台分譲住宅」
「あるジーサンに線香を」
「動物家族 」

2012年12月10日

読書状況 読み終わった [2012年12月10日]
カテゴリ ┣東野圭吾

思いわずらうことなく愉しく生きる、と聞くと、ひどく自由奔放で苦労のないようなイメージを受けるけれど、実はそうではないという事実を知るような話でした。思いわずらうことなく愉しく生きるには、そうするだけの覚悟や、信念のような確固たる自分が必要不可欠で、同時に多くのものを失う可能性も孕んでいるということ。
それでも、なぜ彼女たちがそんな生き方をできるかといえば、「家族」という絶対の味方がいるからなのかな。

それぞれ全くタイプの違う女性である三姉妹の麻子・治子・郁子。
自分は誰に一番近いだろうかと想像しながら読むのが楽しかったです。
とはいえ、彼女たちほど思いわずらうことなく愉しく生きることは容易ではないので、「誰にも似ていない」という結論に至ったのは、私だけではないだろうと思います。

ある種の覚悟と強い信念を持って自由奔放に生きるか、少し気持ちをゆるめて多少の煩わしさを許容するか。バランスよく生きたいと感じました。

2012年12月9日

読書状況 読み終わった [2012年11月7日]
カテゴリ ┣江國香織

「自分が幸せであること」と「誰かを幸せにすること」って、別のことに見えて、実は同じことなんじゃないかと思うのだけれど、特にサトルにとってはそうであってほしいなと、強く強く、祈りにも似た気持ちで思わずにいられませんでした。だってこんなにもみんなが幸せにしてもらってるんだもん。

ナナも、コースケも、ヨシミネも、スギも、チカコも、ノリコも。きっともっともっといるんだろう。そして私もだ。

切ないとか、悲しいとか、あたたかいとか、ずるいとか、いろんな形容詞が浮かんでくるんだけど、それを全部まぜこぜにして、矛盾しているようだけど「なんとも言えない」という表現が一番しっくりきます。

読み終えたのは半月くらい前になるのだけど、いまだに思い出すだけで、涙がでそうになる。

2012年11月30日

読書状況 読み終わった [2012年11月20日]
カテゴリ ┣有川浩

表題作の「あした恋するキス講座」と「マイ・ポケット・アネックス」の二編。

主人公の小島五和は32歳独身OL。それまで仕事に生きてきた彼女だが、4年振りの恋の結果、酷い裏切りに遭います。
その裏切った彼と、そんな彼女をバカにする「可愛い」後輩の女の子を見返すために出会ったのが、恋愛マニュアル「あした恋するキス講座」でした。

この本の面白いのが、小説としてだけでなく「恋愛マニュアル」としても読み応えがあり、楽しめるところです。五和と一緒に、なるほどなるほど、と読んでしまう。
そして、恋愛にテクニックは必要か?モテることは幸せか?と考えさせられる話です。
私は、恋愛テクニックは時に効果的だと思いますが、モテと幸せは全く同義ではないと思っています。
「モテ」が持て囃される今日日、モテるって辛いなんて話はきっと大バッシングにあうと思うけど、これを読むと大いに納得できます。あまりない側面からの描き方で面白かったです。

続く「マイ・ポケット・アネックス」では、話の中に出てくる「あした恋するキス講座」というサイトの謎が明らかになります。
この話まで読んで★5つ、といっていいくらい、おまけではなくて楽しめる話です。時には明らかになった方が幸せな秘密もあります。

2012年11月16日

読書状況 読み終わった [2012年11月12日]

ほっとするようなSide-Aのラストから一転、Side-Bの冒頭は、後ろから頭をガツンと殴られたような大きな衝撃から始まります。

恋人を失うということと、「自分は誰なのか」という答えのない問いと少しずつ向き合っていく主人公は、乾いたアスファルトに雨がしみ込んでいくように、じわじわと少しずつ熱量を取り戻していきます。
そしてずっと守っていた堤防が決壊するシーンでは、読んでいる私まで堤防決壊!笑

「なあ、今の君に今の僕はどんな風に見える?」
結局は、それが唯一の答えで、一番大切な守るべきことのような気がします。

真夜中の五分前―以前なら「昨日」に取り残されてるような主人公だったけれど、今は"five minutes to tomorrow"―明日に続く5分間が、過去と向き合い、明るい明日に向かうための大切な五分間に変わったような印象を受けるラストでした。
今日の最後の五分間、私は何を想おうか。

2012年11月14日

読書状況 読み終わった [2012年11月14日]
カテゴリ ★小説

六年前に死んだかつての恋人がそうしていたように、時計を五分遅らせ、世界と五分ズレた時間を淡々と生きる主人公。
ある日彼は、通っている公営プールで双子のかすみに出会います。
そこから世界が少し、あるいは大きく動き出す話の前編。

自分が自分であることの証明は、思ったよりも難しい。というか不可能なのだろうか。(東野圭吾「パラレルワールド・ラブストーリー」を思い出します)
まして、自分に良く似た(似すぎた)双子のゆかりがそばにいる、かすみならその思いは尚更かもしれません。

なぜ彼は彼女じゃなくて自分を選んだのだろう。
なぜ彼は自分じゃなくて彼女を選んだのだろう。

答えの出ない問いはSide-Bへ続きます…。

真夜中の五分前。
すでにみんな新しい日を迎えているその時に、五分遅れた時計と主人公は、まだ「昨日」を持て余している。
少しだけ、でも確実にズレている時計は、ソツなくすべてをこなしているようで、どこか一線をひいている、冷たい(性格ではなく、熱量を感じさせないという意味で)主人公を象徴しているようでした。

2012年11月14日

読書状況 読み終わった [2012年11月14日]
カテゴリ ★小説
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