鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐

3.99
  • (536)
  • (791)
  • (407)
  • (51)
  • (17)
本棚登録 : 5441
レビュー : 578
著者 :
adagietteさん 日本の小説   読み終わった 

ツォル帝国に併合されたアカファ王国。
その陽光とどかぬ岩塩坑で働かされる奴隷達を、ある日、黒い犬が襲う。
犬は次々と奴隷を噛み、そのまま逃げさるが、噛まれた者たちは数日後、正体不明の病におかされて死んで行く。
狐笛の彼方や 獣の奏者でも主役級で生き物が登場するが、この黒い犬とその病が重いテーマとなってこの作品を貫く。

同時に、ツォル、アカファ、オタワル、奥、モルファ、そして辺境の民 ---- 生活環境や習慣、立場 の異なる集団が並立して描かれ、実世界の国際関係や政治を彷彿とさせる。

黒い犬の惨事から1人生き残った <独角>のヴァンは、母の遺体に隠されるように生き延びた幼子を竃の奥に見つけ、その子を背負って逃走する。
守り人シリーズの チャグムを守って逃げるバルサ....いや、バルサを託されて放浪するジグロの姿が重なる。

そのヴァンに興味を惹かれ医術師ホッサルや、命令をうけてヴァンを追うサエなど主要な登場人物のみならず、ヴァンを受け入れるオキの民やホッサルを取り巻く人々などなど、周囲の人物もとてもくっきりと描かれていて、群像劇を見るようだ。

ファンタジーとは、架空世界で、空想上の生き物や多くの場合は魔法などが繰り広げられる作品だが、何かしら読者を納得させる重みがなければ、広く読まれるものにはならない。
民俗学研究を基礎に持つ上橋さんの描く世界には、目をこらして実世界をよくよく眺めた先に透けてみえるような存在感がある。

上橋さんが国際アンデルセン賞を受賞されたのが2014年3月。その半年後の出版は受賞と関係が?と思ったが、そんなことを考えた自分が恥ずかしい。

レビュー投稿日
2014年11月10日
読了日
2014年11月10日
本棚登録日
2014年11月11日
3
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐』のレビューをもっとみる

『鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

『鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐』にadagietteさんがつけたタグ

いいね!してくれた人

ツイートする