【2019年本屋大賞 大賞】そして、バトンは渡された

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本棚登録 : 4778
レビュー : 666
著者 :
adagietteさん 日本の小説   読み終わった 

瀬尾まいこ氏の作品は ファンタジー領域にある。
さりげない日常を切り取ったようでありながら、登場人物はいい人で いい人と巡り合って 平凡だが幸福な時間がそこにある。
『そして、バトンは渡された』
これなんて その際たるもの。
幼い頃に病気で母を失った優子だが、さまざまな事情で次々に交替していくどの親にも大事にされ、芯が強くモノに動じない現代的で生き生きとした女性に育っていく。
もうカンペキすぎ、ありえない(笑)

でも、道徳本のカンペキとはちょっと違う。
このふんわりと優しいお話の向こうには 強い願いと信念が くっきりと見える。
一人の子供がちゃんと成人するまでには それだけの育てる者の覚悟とエネルギーが必要なんだよ。
それは地味な毎日の積み重ねだけれども なかなか大したことなんだよ、と。
我慢も必要、努力も必要。
でも、それを唱えちゃうのは全体主義者のやること。どうすればたくさんの人に "やってみせるように”伝えられるか。
その手法が小説なんだろう。

よかったのはピアノ関連のところ。
優子は合唱祭のピアノ伴奏をする。
恒常的にピアノをさらっているわけではない彼女でも 練習すれば弾けそうな曲が選択されている。
森宮さんにプレゼントする曲も(え?ムリでしょ?)とは思わせない曲。
そういう地に足がついたディテイルが良い。

早瀬くんがピアノについて迷う時間も良い。
アートとしての演奏と、聴衆を楽しませるための演奏と、くっきり分けることはできない。
それでも、自分はなんのためにピアノを弾くのか?という問いと向き合うことは、将来にいきづまるピアノ・サイボーグをつくらないための課題。
動機を掘り下げることを厭う傾向が強い日本の教育への問題提起とも言えるかもしれない。

レビュー投稿日
2019年3月10日
読了日
2019年3月10日
本棚登録日
2019年3月10日
11
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