明治の訪れとともに 西欧文化への接触が始まった頃。
列強と並ぶには ”ビブリオテーク”が必要だ!という掛け声とともに産声を上げた 帝国図書館。

誕生したものの 図書館の必要性があんまりわかってない人たちに振り回され繰り回され踏んだりけったりの涙ぐましい歩みを続けた帝国図書館の歴史と、界隈のぼろ家に住む謎の老女 きわこさん の人生の物語とがパラレルに進む。

ライターの”私”は作者の中島さんの投影だろうか?
なんの繋がりもない妙な老女 喜和子さんと知り合い 付かず離れずの付き合いを続けていく。
喜和子さんは 私がライターだとしり 『夢見る帝国図書館』という物語を書いてくれと言う。
なんだそれは?『夢見る帝国図書館』??
面倒に思いながらもちょっとリサーチしたりするうちに 喜和子さんは老い衰え亡くなってしまう ........

単身の喜和子さんは 九州の嫁ぎ先から逃げてきたらしいけれど、子供のころ 図書館の近くで育ったという。
いったいどういう人生を歩んだんだろう?

親戚と知り合い、人を訪ね、ぼんやりと浮かび上がってくるその人生は この国に生きた過去の女性たちの辛さがずっしりと染み込んでいる。
自由の価値。
尊厳の重さ。
まともに扱ってもらえない存在が 帝国図書館の苦労と重なる。

でも 老年期の喜和子さんは自由だ。自由で伸びやかに呼吸している。
帝国図書館も最後に 22歳の若い米人女性のために 渾身の仕事をする。

それは現代を生きるものへの贈り物なのだ .......

図書館や上野という切り口から近現代史を観る、中島作品らしい温かい物語でした。

”喜和子さん”のご冥福を心から祈ります。

2019年9月17日

読書状況 読み終わった [2019年9月17日]
カテゴリ 日本の小説

温又柔『君の代と国々の歌』
話題の 河出書房『文藝』2019夏号に収められた短編。
日本育ちの台湾人である女性が 中国語が話せる日本人男性と結婚する その祝宴からはじまる短編。
親世代 祖父母世代 いくつもの世代が集まると そこに 中台日の歴史の影響が 見えてくる。
日本語を流暢にあやつる祖父は標準中国語に良い感情が持てない。主人公とその妹も それぞれに異なった言語力を持つ。

家族が集まる祝宴。
それは 主人公が子供のころに出席した叔父の宴の記憶につながり、標準中国語で育った叔母の苦労を静かに、でも雄弁に想像させる。
主人公の記憶は 先方家族の子供たちとの交流へとうつる。
わずかに出現しかけた壁を敏感に察して 発する言語を選び取る子供たち。
いつでも子供は希望だ。

最後はそこに韓国語も加わる。
遠い時代に大東亜を唱えたエライ人たちは こういう場面をどれだけ想像できていただろうか??

登場人物は多く、中国語を表す漢字には丁寧にルビがふられ  (((ええとこの人はどこで生まれてどこで育って何を話す))と 人物背景をイチイチ思い出しながら脳はフル回転、結構大変だが 温氏自身が体験したことが多数散りばめられているのだろう、しっかりとした質感がある。
なんという温かさだろう。
もし我が家族に幼子が加わるのであれば こういう世界で自由に呼吸してほしいと願う。

令和のはじまりを寿ぐにふさわしい作品でした。

2019年9月4日

読書状況 読み終わった [2019年9月4日]
カテゴリ 小説

大都市のベッドタウンだろうか? 
わりと大きな病院があって、そのとなりには映画館もはいるわりと大きなビルがあって そのまわりに人々が住む街。

ひとりひとりのお話は短くて でも”小腹を満たす”程度には面白く 一つ読んでは満足し 二つ読んでは続きはこんど ....と、読むのにえらく時間をかけてしまった。

でも読み終わるとすぐ、もう一度読みたくなる。

となりの国のものがたり とシリーズにしてあるけれど これは隣人たちの物語。
普通の人々の生活を ぐるっと見回して 自分も住んでいるかのように感じるそんな街の物語。

ぱっと見カッコイイ ビルはあっても、一般人の家はイマイチだとか、どうも働きすぎる傾向があるとか、なのに上の人には言いたいことを言いづらいとか、すごく普通、すごくわかる。

軽い毛布がじんわりと温みをくれるような 当たり前の共感がじわじわ来る よい本でした。

2019年8月31日

読書状況 読み終わった [2019年8月31日]
カテゴリ 小説

session22 のブックトークで紹介されていた。
  https://www.tbsradio.jp/393194
ナオコーラさん もちろん名前は知っているが 初読み。

日頃 中身を開けて見ないようにしてきたモヤモヤを 丁寧に解体されてしまう感じ。

山崎氏がブス・バッシングを受けるようになった理由というのが、すごい。
彼女の作品が評判になったのがキッカケだそうだ。
それまで ブス呼ばわりされることは一度もなかったと。
うわぁ ........ 納得したくない。でもわかってしまうわ ...

”世間は「ブスはどうやったら自信を持たないでいてくれるか?」という圧力をかけてきている

>> 容姿基準で女性に序列をもたせることで それをジャッジする側の権力を発生させる。
ブスと同時に美人にも”あるべき”を押し付け差別している。

”一般的に広がる男性的な欲求は「美人から『あなたに一番に愛されたい』と願われたい。ブスからは『私みたいなブスに、ご飯を奢ってくれるなんてそれだけで嬉しい』と言われたい」というものではないか?

>> ああこれこれ 困った利用者からダダ漏れに発散されているアレだわな。

”ブスが綺麗になろうとしてもいいが ブスのまま生きていてもいいんじゃないか?
美人だっていつもいつも小綺麗にしてなくてもいいんじゃないか? どんなレベルであっても 文章を書くのが自由なように 自分の外見くらい自分の好きに生きていいんじゃないか。

>>そうそう ただそのようにある そのように行うことを容認してくれればいいだけで 世間さまにイイネしてくれ!と言ってるわけではないのだ。

まぁ、 同意ポイント列挙はキリがない。
自分の個人的なハコまで全開しそうになるしw

ところで、ナオコーラさん いっときメディアへの顔出しをやめていたそうだが、あるきっかけで もうそんなことはどうでもよくなって 顔出しを打診されたらナチュラルに出ることにしたそうだ。

亡くなったお父様の最晩年の言葉
「こつこつやるだけでいいんだよ。賞はもらわなくていい。」

女性を本当に愛してくれるのは父親であろう。
息子たちが母親の無限の愛を得て生き延びるように、娘たちには父の愛が必要だ。
この社会が父性を欠きがちなのは 母親たちが相棒であるはずの父の存在を消してしまうから ......

その他、新聞の被害者写真のこと ウヨ議員の差別発言のこと 性的対象ではない異性の友人のこと などなど。
自分が曖昧に持っている価値観を ひとつひとつ検証し明確にしようとする言葉は たぶん重たいし 読みこなすのが面倒と感じる向きも多いのではないかと思う。
その意味ではオススメ本ではないけれど。
マトモだ。
まっとうだ。

なんだかだいっても美醜の評価を変えることはできない。
女性は見た目で判断されるし 男性は見た目判断はユル目でも社会的地位で判断される。
差別はなくならない。
分別のある男なら 女性の美醜についていやいやそんなことは...と言ってくれるが 良い友人に感謝するにとどめておく。
頑張って美人ステータスを上げようと商売はあおるが 限界があることは理解したほうがいい。

差別を克服することはできなくても、その場から去ることはできる。
外野の評価に疲れたら 関係を絶つのが一番。
そういう連中とは付き合わなければいい。
死が訪れるその日まで ひとりでも生きてはいける。

2019年8月26日

読書状況 読み終わった [2019年8月26日]
カテゴリ エッセイ
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日銭稼ぎで口に糊する語り手の女性。
彼女が長きにわたり "観察”の対象にしているのが 表題の ”むらさきのスカートの女”
それは 自分と同類であろうという匂いを感じているから。
近づいて知り合いになりたいというひそやかな願望を抱いているから。

読み終えてみると 
”むらさきのスカートの女”は語り手よりは少しはしたたかで、 語り手は相当に愚かしい。
ふたりのいる世界は小さな町と小さな職場で そこの人間模様も”小説に閉じ込めてみると”小さく滑稽だが 本人たちは 当然ながら 人生のすべてがそこにある。

季節ごとの短編ドラマ『世にも奇妙な物語』みたいな感じ。
女性の職場が舞台であり その点はかなりマンネリ感がある。

みなさん書かれているように 賞とり作品にするなら 『星の子』の方が断然いい。

第二次世界大戦中 ナツィの迫害を逃れ逃れてスイスまで逃げ延びた少女の記憶。
ホロコースト体験として 出版され、映画化もされた作品。
ドイツからパリへ、そこから親と離ればなれになり、妹ふたりを守って子供用の施設でかくまってもらったり 親戚のところでくらしたり 転々と。
密告され、監禁されて、取り調べをうけたりもする。
最後は他の子供もまとめながら、スイスへの国境を越える。
自分の身に起こったらと思うと背筋が寒くなるばかり。

ホロコーストは悲劇だ。
ただ、彼女たち個人を離れユダヤ人というくくりでみると、いまイスラエルがパレスチナにしていることは何なんだ?と思うし、少しも尊敬できない米国の力押しのバックグラウンドには多数のユダヤ系実力者がいるわけだし。

なにもユダヤ系の矛盾に限らない。
物語の中で ファニーたちを苦しめるのは ナツィではなくナツィに共鳴するフランス人ーーー自分たちだって支配されてるのに。
日本だって 平気でヘイトを叫ぶ人はいなくならないし、叫ばなくても彼らに共感している人はたくさんいる。

みんなヒトラーと一緒じゃないか。
自分のコンプレックスから逃げたくて他人を踏みつけたい。その気持ちを恥じる理性を失えば、世界はあっというまに戦場になるのだ。

とまで児童書に噛み付くべきではないが。
ファニーが生き延びてよかった。
でも礼賛する気持ちには どうもなれない。

2019年6月30日

読書状況 読み終わった [2019年6月30日]
カテゴリ 小説

螺旋プロジェクト 発起人(でいいのかな?)伊坂さんの作品は 昭和の頃のささやかな嫁姑抗争を描いたシーソーモンスター。
そして近未来の 逃走を描いたスピンモンスター

シーソーモンスターは 展開が気になりながらもお気楽に読める。嫁、スゲー!げらげら って感じ。

スピンモンスターはいささかヘビーだ。
権力に追い詰められる緊張感が だいぶ怖い。
それでもまさかのヒントが繋がって >>> 普通ならわざとらしいのに 自然に読めちゃう伊坂節。健在。
もうちょっとで悪夢のような現実からにげおおせそう!というときに、全体のからくりに気づく .....

便利 利便を手にしたら 考えよう。くるっとね。

2019年6月30日

かなり人気の高かった作品、こんど木村拓哉でドラマ化するそうで 読んでみる。
警察学校が舞台で、そこでおきるいろんな事件を 教官の風間がベテラン警察官らしい 観察力・情報力・洞察力でもって 解明していく ...... 解明できないのもあるんだけれどね。
というか 解明が目的じゃなくて 適正を見分けて 警察官になる資質がない者をはじいていく、という話。

警察小説は山のようにあるけれど 学校が舞台というところがユニーク?
学校内が舞台のため事件現場も限られているのは ドラマ化するには好都合だろうか? けど どうしてもちんまりちゃう印象。
それと、警官志望って こんなヤバい人多いの???ってくらい イヤな奴だらけ ......

2019年6月12日

読書状況 読み終わった [2019年6月12日]
カテゴリ 日本の小説

2023年 移民法が変わって 大量に外国人労働者が増え 彼らの斡旋やトラブル処理に関わる 仮部。
パルクールの達人である仮部が 無断欠勤のベトナム人女性を探すよう依頼される。
場所は 特区を利用し労働法の枠をぶち破った巨大学産共同体 東京デュアル。
東京湾岸エリアの五輪跡地に作られた 学校と職場が一体になったエリアだ。

この作品をどういうキッカケで知ったのか?忘れちゃったけれど、雇用と法律が 大きなモチーフになっている。

終身雇用を前提とした日本型にもう限界が来ている。
転勤は?長期休暇は?有給消化は?整理解雇は?
今までのままじゃやっていけないが、セイフティネットが整わないままに企業の勝手が通れば、社会は荒れる。
ちょうど、それを象徴するような #カネカ 事件が起きたばかり。
作品中では、シンガポール方式なのか? 東京デュアルの雇用の利点や問題点が 随所に使われている。
何が正しくて何が間違っている、というのではないだろう。バランスの良い落としどころはどこか?と考えさせられてしまう。

キャラクターの内面はさほど深くは描かれていない。
かな〜り ぐぃっと来るのは ヨーコくらいか .....
学長の三橋もようわからんし。

その代わり (?) に、都内を俊敏に移動する 仮部の姿や モニターやら ドローンやら スマホやら 時と場所と用途に応じて 人を繋ぐツールの描写が 軽快なテンポと 映像的なひろがりを作っている。
クライマックスのシーンでは その 仮部の移動が さまざまな『届ける』お話のオマージュにも感じられて、一気に盛り上がる。
身体性は あなどれない。

2019年6月7日

本棚見ると 3冊目の朝井リョウ 
桐島も読んだので4冊目か。
親はたぶん "ヤリガイ幻想”世代 。
「やりたいことを見つけて...」が 良い含みを持って世間に垂れ流されている環境で 育ってきたのではなかろうか。 彼の作品の登場人物は 
できる/できない 
好きなものがある/ない 
評価されたい/評価気にしない
という視点から描かれている。『ままならないから ...』では それを女子で書いちゃって その単純さに私はイラっとしたみたいだが 本作は 男子中心。

”いつかはクラウン” ...... ではない世の中になって久しい。
言い換えると 人生の目的や喜びは おのおのが納得できるものを探さなくちゃならない。
それは 「やりたいことがある人」には生きやすいけれど、そうではない者にとってはどうなのか?

ざっくり定義すると”できる/評価されたい/好きなものがない” 雄介。
その能力の高さもあって、周囲は彼に直接的に変わるべきだとは言わない。 ただ 環境は変わっていく。
棒倒しはなくなり 成績は発表されなくなり 大学は統一価値がない場所だ。
能力が高い雄介は 少しづつ 自分の拠りどころを失っていく。

その雄介とずっと仲良くしてきた 智也。
智也は できる/評価気にしない/好きなものがない と自己分析している。

雄介と智也 まったくキャラの違う二人が 最後の最後に衝突する場面で、雄介は見事に両者を分析してみせる。
圧巻。
男子ならでは。

もちろん女性も登場するし、女子にとっての ”対立” も書き込まれてはいるのだけれど ”降りる”選択をしやすい女子と ”降りる”と”評価されない”男子 との違いもくっきりと。
男子ならではの 生き辛さも描き込まれている。

メディアの現場における同じ構図と その背後にある権力者の老獪で汚い図太さも なかなかの質感。
昭和株式会社思想から抜け出せない 嫌がらせ転勤など発動して溜飲を下げているような人種は、よく噛み砕いて飲み下せるまでこの作品を読むとよいよ。

最後の智也の章では この作品を含む”螺旋プロジェクト”のベースになる設定『海山伝説』がしっかり登場するが、現代の寓話として きっぱり描かれている。
それは異文化だからなのか?
それとも個人のもつ特性なのか?
惜しむらくは 智也のくだりが 長い。長いというか説明的すぎて煩雑。

でも平成生まれの男性の群像が見事に表現されている。偉そうな言葉遣いをしちゃうと、腕上げたなぁ、朝井さん!

ところでこれ、あと10年?20年? 
その後を読みたいよ。
白井さんも 亜矢奈も 弓削さんも どう生きて行くのだろう .......!?

p.s.
電子書籍で読んだ。ただでさえ、なんでもすぐに忘れちゃうのだが、紙本よりも さらさらと抜けていく感覚。。
が、今回は できるだけマーカーをしてみた。
マーカーした文章の一覧を眺めながら レビュゥしてみた。
また、電子書籍版には、おまけで、螺旋プロジェクトの作者が全員集まった トーク会が収録されている。
人数が多いせいか 褒めあい大会ではなくて面白い。

2019年6月5日

幻冬舎騒ぎで、津原泰水氏の作品を初めて手に取った。

なるほど、
あの騒ぎの渦中で、河出さんが社名でつぃったほどの作品である。
独特で濃厚。 
異端でありながらも堅固な人権感覚も根底にある。 
軽薄な読み手である自分には マッチしない、異端と common decency に神経を捻りあげられるようではあるけど、なるほど、なるほど、なるほど ........

追記
この感触、思い出した。
深沢七郎氏の『みちのくの人形たち』だ。
グロテスクというかホラーというか、そういうテイストでありながらも この世を支える根底にあるものを想像させようとするような .......
https://booklog.jp/item/1/4122056446

2019年5月19日

読書状況 読み終わった [2019年5月19日]
カテゴリ 日本の小説

舞台はビルバオから バルセロナへ。
あの有名なカーサミラやサグラダ・ファミリアの登場は予想の範囲だけれどペドラルベス周辺は当然のように全く知らず、上巻の最初の方に登場したあの図はそうだったのか!と、検索してしまう。
カルト教会 ネットのリーク記事 近衛兵隊 王宮セキュリティなどなどが次々に登場して話を進めていくが、混乱させずに読ませていくスッキリさもさすが。

また、殺人事件モノでありながら犯人はだれか?よりも 「人類はどこから来て、どこに行くのか?」という普遍的な問いへの興味が主軸になっているのも、なにか楽しい。

大団円が近づくにつれて「プレゼンテーションの聴衆を最大にする」というフレーズがちょいちょい登場するので、最後はある程度予測がつく。
が、きちっとそこを書き込むことで、IT時代の長所短所をちゃんとおさえておくオーソドックスさというか用心深さも手馴れているなぁと感じる。

ダン・ブラウン級ともなれば 向こうからやってくるネタも多いだろうし 的確な取材もしやすかろう。
それでも、無関係なモチーフをうまく繋ぎあわせる手腕には畏れ入る。
それを可能にさせているのはブラウン氏の揺るぎない体系的な教養であろう。
上品な娯楽本でありました。
あ〜〜 ビルバオ行きたい!

2019年5月18日

前作インフェルノはもちろんアートを小道具にしながらメインテーマはパンデミックと人口問題であった。
本作はブラウンが得意とする宗教と、それに相対する自然科学そして最先端技術の対比をテーマに据えている。

舞台はスペイン。
ビルバオのグッゲンハイムに始まって、マドリッドやセビリャを交えつつ、バルセロナへ飛ぶ。

異郷をモチーフにする作家さんはたくさんいる。
日本でも内田康雄氏 西村京太郎氏 山村美紗氏など。
ダン・ブラウンもそうなんだけれど、やはりキリスト教のバックボーンを持たない読者としては、そちらの知識を存分に活かした作品はいっそう興味をそそられる。

今回は気鋭のテクノロジー研究者が、 人類はどこから来てどこへ行くのか?という問いに答えを出し古き宗教の拠り所を一掃することができた、というプレゼンテーションを全世界に向けて発信する、という華やかなステージで事件が起こる。
ビルバオ・グッゲンハイムの描写でぐっと読者の興味を引く手法は毎度おなじみのものだが、主役のラングドンに最新テクノロジーについていけずにまごまごさせるあたりも、読者に親しみを覚えさせて上手いもの。
そして、ラングドンの相棒は、グッゲンハイム館長にしてスペイン王子のフィアンセという才女。
現在のスペイン王妃と重なるキャラでそのあたりもサービス精神旺盛ですね。
下巻に続く

2019年5月18日

読書状況 読み終わった [2019年5月18日]
カテゴリ 小説

『傲慢と善良』 https://booklog.jp/item/16/29557043 の中の "女たち”の記述がまったく容赦なく、これまで 自分は 辻村深月の何を観てきたのか?と唖然とした。

そういえば 登場する女性たちがアンマリだ と誰かが言ってた...と 思い出したのが ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。2009年だから10年前の作品ですね。

『傲慢と善良』が結婚をめぐる男女を描いたのに対し、こちらは 地方都市に生きる女子の 知性や生きる力の格差 が如実に描かれている。
教育熱心な”いいお家”の子だが幼い頃 母に”虐待されて”いたみずほ。
事件のヒロインの チエミは 両親に可愛がられて育ったようだがその実、子供のまま囲われているような女性。自立とは程遠い。

幼馴染のふたりは高校進学で人生が離れていくが 社会人になってから 知的ではないがタフな政美の交友関係にも巻き込まれ、繋がり続ける。
華やかで可愛いが不倫を止められない果歩。
帰国子女で建築士の亜利沙 などなど ... 複雑な女子社会の力関係が展開する。
容姿・学歴・実家の太さ そういうものが影響しあって 羨んだり 手札にされたり 非常にややこしい ...

他の子よりも”条件がいい” みずほ。
彼女のパートナー選択は実に賢明。
一方、チエミはダメ男にひっかかってしまう。
しかも、その男にバッサリ切られる。
「だけど俺と付き合ってなければ それこそ あの子には何もなかったと思うよ 」 ...(出会いがないのよぉ......ってやつだ .. ))
ところが チエミ自身はよくわかっていない。狭い世界と乏しい想像力しか持たないのだ。いや、持たない人間に育てられてしまったのだ。

まるで違う みずほとチエミ。

だが みずほは チエミをあきらめない。 そこには女性ならではの事情も絡む。
20代から30代の女性は かくも壮絶 ...... キツイ世代だよなぁ .......
仕事の評価が唯一最大の関心事である男子多勢には想像できんだろう。
「すべての娘は、自分の母親に等しく傷つけられている。」
一方、息子たちは母親に+α愛されて育ちますし。

力とカネと話題性がある人物に簡単になびく、そこになんの思考も働かせないような "カワイイ”女性たちは 個人的にはいささか不可解なんだが、怖気とともにマルッと剥いて”チエミ”という姿で見せてくれたことがインパクトあった。

たとえ優秀じゃなくても、勝者になれなくても、他者から軽んじられないよう踏ん張る力は男女関係なく 必要ではないか?
やっぱり 知は力 勉強はしよう!

カテゴリ 日本の小説

”どうして彼女は結婚しないのか?”
結婚したいと思ってはいるんだけど ......と 言うワリに結婚しない ... 可愛い子なのにどうして ..? そのワケを あまりにも直裁に書いている。
知り合いなら 絶対に言わないようなことを書いちゃってるのよ これ。
やっちゃったな辻村深月!
いや、ちがう、タイトル見て気づけよ私ww
『傲慢と善良』だぞよ

電子書籍で立ち読み そのまま ずるずると購入。
一気読みしてしまった。

スムーズな導入 2ヶ月前の大げさな出来事。
最初は失踪ミステリーなのか?と思った。
そこから1枚づつカードがめくられる。
都会育ちでナイス・ルッキング、高学歴・お金もそこそこありそうで感じの良い架(かける)の 自分でも気づいていないダメっぷり。
ん、これ、あかんタイプやわ。。。

相手の真実(まみ)は前橋から上京してきたらしい。
彼女の両親の田舎っぽさ、お見合いおばさんの手強さ (やっぱり地方都市って東京にはない何かがある)

そして大転換。
一筋縄じゃいかない架の女友達たちのしたたかさ ああいるいる。。書くんだこれ。。こわいわ〜 ww

そして真実の事情に移る。
母も娘も これまた いるいるこういうタイプ。。
穏やかそうで面倒くさい人。悪気がないからこそ厄介な人。
うまくいかないわけだ、これじゃ。。。

この露悪っぷり、どう収束させるのだと思ったら、後半は東北でのボランティアが出てきた。
唐突に出てきたようで 違和感がない。
そして 最近有名になったアレですよ!
津波の被害を受けた土地での 仕事が 真実に縁をつないでいく。
見ず知らずのおばあちゃんの言葉に すべてがおさまる。
せっかくの露悪路線、こんなに綺麗におさめるなよ〜www

でもわかるわ ...
遅いけれども 親離れのための時間 本当に巣立つための準備。better than never

100点じゃないから良い。
あばたもえくぼ。
われなべにとじぶた。

これ映像化するとしたら 女優さんが難しいなぁ ...
でも観たい。
三波神社を観てみたい。
そんなディテイルも良かったです。

2019年4月4日

現代の怪談話
「私」が新潮社の連載のためにネタを集めているという体裁をとっている。
怖い話が苦手な人はやめたほうがいいのかもしれないけれど、長い車中などの暇つぶしにはちょうどいいでしょう。

2019年3月31日

読書状況 読み終わった [2019年3月31日]
カテゴリ 日本の小説

”女性差別” を描いた作品は 世界中どこにでもあるのではないか?と推測するが この キム・ジヨン氏は 特に日本女性にとって共感しやすいものではないだろうか?
その理由は言うまでもなく儒教思想の影響。
家を守るため男性をたて男児を優先する文化の影響下にあるからだろう。

だから女性達はできうる限り我慢する。
Me を口にするのは 家族を守ってからなのだ。
このあたりが、自己判断で No!を言える社会との違いで、強く共感する部分なんだろうな ........

キム・ジヨン氏の母 オ・ミスク氏の話は明治の女のようだ。学校には行かせてもらえず、ひたすら家のために尽くす。
それどころか男を産むまで肩身がせまいという。
胸が詰まる思いがする。
だが、なんとタフなのでしょうか! 
家を守る ということは決して容易いことではない、それをやり抜く強さと賢さが鮮やかに書き出されている。

そして彼女は 娘達にちゃんと教育を受けさせるのだ。
母のような思いは味あわせないぞと。

キム・ジヨン氏は社会に出てから強烈な逆風に煽られる。
女性であるがゆえに。
仕事は楽しかったが子供を身ごもって退職する。育児に振り回される日に元同僚が遊びに来るくだりがいい。
ここはホロっとしたな。
専業母の何が大変かって孤独なことだよね..........
だが元同僚が話す職場の事件がとんでもない!
うっかり本を投げつけたくなるくらい酷い。

さて、お話は、キム・ジヨン氏が我慢を重ねた結果、不調に陥り精神科を受診するというくだりで冒頭に戻る。

この作品は巻末のいくつもの解説を含めて一層理解が深まるようになっている。
強く共感を覚える韓国女性の話だが、その際立った特徴もまとめてある。

面白いのは韓国男性のもつ不公平感のくだり。
兵役とそれに伴う2年のギャップ。
それが不公平感の源泉ではないかと。

考えてみれば、儒教文化の影響で No を言いづらいのは女ばかりではない。
格下の男達も また押し黙って我慢をしているのだ。
この社会に於いては 男達のホンネ物語も語られなければならないのではないだろうか。

2019年3月31日

あの 傑作タグ #名画で学ぶ主婦業 書籍化されちゃいましたか〜〜!
なんだかだいいつつ 育児の大変さがたっぷり込められている このタグ。
初々しい親御さんたちへのプレゼントに最適かもしれません。
辛い時にはこれを開いて、笑って、あとは何もかも放り出して寝ちまうのがいちばん!

2019年3月30日

読書状況 読み終わった [2019年3月30日]

コトの善悪を心得ない奴。
自分の欲望を満たすために他人を傷つける奴。
そういう奴らを懲らしめるのが伊坂作品の痛快さ。
本作の正義の味方は虐待されてそだって双子。
敵は父をはじめとする虐待野郎達。

正直、練り切れてない感が強い。
双子特有の心理を書き込みたかったのか?
サイコパスたちの異様さに切り込みたかったのか?
紙芝居のように新しい人物が出てきて話が展開するのだけれど、重力ピエロのような質感もなく、グラスホッパーシリーズのような渇いたブラック感もなく、陽気なギャングのような軽さもなく ちょっと勿体なかった。

あれだけたくさん登場する人々を混乱なく読ませるところは、もちろんいうまでもなく伊坂作品ならでは。

2019年3月21日

瀬尾まいこ氏の作品は ファンタジー領域にある。
さりげない日常を切り取ったようでありながら、登場人物はいい人で いい人と巡り合って 平凡だが幸福な時間がそこにある。
『そして、バトンは渡された』
これなんて その際たるもの。
幼い頃に病気で母を失った優子だが、さまざまな事情で次々に交替していくどの親にも大事にされ、芯が強くモノに動じない現代的で生き生きとした女性に育っていく。
もうカンペキすぎ、ありえない(笑)

でも、道徳本のカンペキとはちょっと違う。
このふんわりと優しいお話の向こうには 強い願いと信念が くっきりと見える。
一人の子供がちゃんと成人するまでには それだけの育てる者の覚悟とエネルギーが必要なんだよ。
それは地味な毎日の積み重ねだけれども なかなか大したことなんだよ、と。
我慢も必要、努力も必要。
でも、それを唱えちゃうのは全体主義者のやること。どうすればたくさんの人に "やってみせるように”伝えられるか。
その手法が小説なんだろう。

よかったのはピアノ関連のところ。
優子は合唱祭のピアノ伴奏をする。
恒常的にピアノをさらっているわけではない彼女でも 練習すれば弾けそうな曲が選択されている。
森宮さんにプレゼントする曲も(え?ムリでしょ?)とは思わせない曲。
そういう地に足がついたディテイルが良い。

早瀬くんがピアノについて迷う時間も良い。
アートとしての演奏と、聴衆を楽しませるための演奏と、くっきり分けることはできない。
それでも、自分はなんのためにピアノを弾くのか?という問いと向き合うことは、将来にいきづまるピアノ・サイボーグをつくらないための課題。
動機を掘り下げることを厭う傾向が強い日本の教育への問題提起とも言えるかもしれない。

2019年3月10日

3年前に父親を亡くし 母も死んでしまって東京にひとりぼっち、天涯孤独な柏木聖輔。
砂町銀座の総菜屋のコロッケが縁で、ひと と繋がっていくっていうイイ話。

なんだろう、昭和っぽい。寅さんみたいな、人情モノ。
悪いヤツ、嫌なヤツも出てくるには出てくるが、惣菜屋さんや”砂町銀座の人々”がイイ人。
同郷の同級生もイイ人。
そもそも 柏木聖輔くんがめちゃくちゃ道徳的な人。
天涯孤独で 一文無しでも コンビニも牛丼屋も我慢して働いて自活していく ................ うーん ............

ベースを諦めるくだりは、よかったんだけれど、弦をさっさと取り替えてしまう違和感。
取り替えてあげるのはわかるんだけど、800円のラーメンが月に一度の贅沢ってコが、ベース弦セットをパッと買ってしまう現実味の薄さよ。

道徳の教科書だよなぁ.........

2019年3月7日

読書状況 読み終わった [2019年3月7日]
カテゴリ 日本の小説

読んだ。
勧められてはいたけれど、エゲつなさそうな気がしてスルーしようと思っていた一冊。

文春のネット記事に興味を惹かれた。
””東大生強制わいせつ事件で議論紛糾――小説『彼女は頭が悪いから』が果たした役割とは?””
 https://bunshun.jp/articles/-/10184

ここに出てくる瀬地山さんという東大大学院教授の発言が 私の中の”ダメな東大ステレオタイプ”にハマっていたから。ン十年ぶりに、あのイヤな感じが蘇ったわ。

相手の発言の真意を汲もうとせず、瑣末を取り上げ間違いを指摘し「何が言いたいのか?」を薄めてしまう。
自己の主張を通すために、他人に仕掛ける”東大論法”
抜群の記憶力と表現力を持つ”頭のいい人”だからこそできる高度な攻撃法だ。 

”東大論法”攻撃を発動させるだけのパワーがあるんだ、この作品は。それで重い腰をあげて手にとった。

まるで響かなかった。
本書ではなく、登場人物の竹内つばさ と 神立美咲、彼らのキャラクターが響かない ----- 理解できないのだ。
つばさに関しては、つるつるでピカピカのハートを持つ東大生 という記述があるが、批判を恐れずに言うと美咲もわからんのだ、私には。
事件に関係なく、これからの時代を生き抜かなければならない人間がこんな長閑で大丈夫なのか?と私は思う。

自己主張とは 自己主張の第一歩は Noと言えること やだよと言えることだ。それは、自分はなぜこれがイヤなのか?なぜ受け入れられないのか?そこから自分探しにもつながるのだ。
私自身は幸いにしてそういうお題を突きつけられてきたし、子育ての初っ端で、子供にそれを仕込まなければならなかった。
でも、とっても優しい良い子の美咲ちゃん、そんなこと考えたことないでしょ? 

ところで、皮肉をこめたタイトルの”頭が悪い”のは彼女ではなく、当然、犯罪者の東大5人男だ。
頭悪すぎる。
中盤で、経済的事情でアザブを中退した男子学生グレーパーカだったか? あるいは司法試験を捨てた兄だったか?と、つばさが会話するシーンで、つばさは相手を言っていることをわからないままスルーする。
そんなことはわからなくても試験には出ないものねw
高偏差値の馬鹿者どもの脳みそを端的に表現している。
最終章はまったく吐きそう、としか言いようがない。
これが イタズラ?悪ふざけ?? 
なぜ、わからない?????

で、現実に、この手の輩がわんさといるのが高偏差値大学であり、大人気医学部であろう。
学校側も学生を商品としか考えていない ---放送中の3年A組の言葉を借りるなら、そういうことなんだろうな。

これは、能研やサピに子供を突っ込んで ”東大にさえ”入れば人生楽勝、なんて考えてる保護者の必読書でしょうな。

はぁ .........ゲロぶちまけたみたいな書評になっちゃった。
自分、ほんまイヤな奴〜
そこをムキ出しにさせる ほんまイヤな、すごい作品だな。

2019年3月6日

読書状況 読み終わった [2019年3月6日]
カテゴリ 日本の小説

2019.2.24  辺野古埋め立ての是非を問う県民投票と同時に読み始めた。

戦後の沖縄。
”米国の統治下におかれ、72年に本土に復帰した”
これが学校で習う知識。

その つるりとした表記の向こうにいた人々を、いったいどれだけ身近に想像してみたことがあるだろうか?

凄惨な沖縄戦の中で、爆撃や殺戮、あるいは自害で親を失った子供たち。住むところはもちろん、着るものも食べるものもない。今日、今、食べるものがないと死んでしまう!
有るところからいただくしかない、と米軍基地から物資をくすねる ”戦果アギヤー”たちの疾走で この長い叙事詩の幕は開く。
過剰なまでに詰め込んだ修辞(カッコだらけ!)と逐一ふられる沖縄言葉のルビ。チム・ドンドン!
もちろんフィクションだ。
そんなことはわかっていてもなお、独特の文面が、重たい・重すぎる現実と常に向き合いながらも豊穣で明るささえ湛える沖縄の空気を醸し出す。

戦果アギヤーの"英雄"オンちゃんは、嘉手納襲撃の最中に姿を消し、その姿を追いながらも、レイ・グスク・ヤマコがそれぞれの道を生き抜く。
その人生は時に交差し、労わりあったり傷つけたり傷つけられたりする。
簡単に答えを出せない事情があり、それゆえに当たり前に守られるべき事が守られず、弱い者たちが踏みにじられる。
フィクションであると同時に、現実なんだよね。。
なんということでしょうか。。。

残虐な描写もあるので、ティーンエイジャーにはちょっと早いだろう。もうちょっと上の世代には考える材料をたっぷりくれる作品だと思う。
しかも 宝島 だ。
宝は たしかに 存在する。
"英雄”もおったのさ。
それらは 決して ”ひとつ” ではないと、思う。

2019年2月28日

住み替え事例がいくつか出ているのだけれども、リフォームして引っ越しして ....... お金もかかるしパワーも必要。
都心の小さな家 、というタイトルだけれど、すごく小さい案件はあんまりなくてね .......ん

2019年2月17日

読書状況 読み終わった [2019年2月17日]
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