久しぶりに翻訳物を読んだ。
翻訳のタドタドしさがまどろっこしいく、どうも隔靴掻痒感があるので、あまり読まなくなってしまったのだが、
この本はまるっきりそうしたもどかしさを感じさせない。訳者がうまい。
内容は、あのヒトラーが現代に蘇り(自殺した時点から2011年にタイムスリップしたというべきか)、本人のものまね芸人として芸能界入するという話。
その突飛な発想に即食いついてしまった。
期待にそぐわず、面白いやらおかしいやら、はじめはケラケラ笑って読んだ。
ヒトラー等の歴史的知識は常識程度で十分。訳者注が充実してるし、なぜか現代の日本の感覚で理解できる。
が、読み進めるうちにだんだん怖さが出てきた。
自分、ヒトラーの言ってることに共感し始めてるじゃないか。
彼の思想の殆どが勘違いと思い込みと独りよがりなのがわかってるはずなのに、ところどころ、「そうだ!そのとおりだ!」と心にかなり深く響く部分があって、
ヒトラーをあそこまで祭り上げた当時のドイツの民衆と同じじゃないかと思い、ぞっとした。
いま、ヒトラーがいたら、また同じことがおこるんじゃないか、とも。
今の世の人々への警告かもしれない。
ここまでヒトラーを再現している作者の筆の凄さにもゾワゾワする。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
翻訳もの
- 感想投稿日 : 2016年6月10日
- 読了日 : 2016年6月10日
- 本棚登録日 : 2016年6月10日
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