燃えあがる緑の木〈第2部〉揺れ動く(ヴァシレーション) (新潮文庫)

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本棚登録 : 138
レビュー : 7
著者 :
afro108さん  未設定  読み終わった 

 治癒能力の欠如でインチキ扱いされたところから再興する新興宗教の話。文体の独特さは慣れるとクセになる感じで読みにくさも全くないし、それよりも物語がグイグイとドライブしていくところに惹きつけられた。
 とくに教祖であるギー兄さんの父親である死期間近な総領事、ギー兄さんの糺弾者だったものの、心を変えて信仰し始めた亀井。この2人のおじさんの立ち振る舞いがオモシロい。それは2人が宗教に対して懐疑的なスタンスから、どっぷりハマるところまで駆け抜けて行くから。
日本人の宗教との距離感を前提にしているので、これなら信仰するかもしれないという納得できる雰囲気があるからこそ説得力があった。お祈りのことを「集中」と呼び、偶像崇拝ではなく祈りの言葉がなかったり。
 そこそこfeelするなーと思ったところで、ある人から指摘される中心の空洞、究極的な責任者の不在=天皇制だよねという議論が展開。社会において、いつも責任者が不在となるのは、天皇制に端を発するとも読みとれるような内容でスリリング。そもそも神様って必要なんだっけ、勝手に出てくるだろ、わざわざ空洞を埋めなくていい。というのも日本ぽい。
 アイルランドの詩人イェーツを多く引用し、彼の言葉が思想のベースになっていく過程がオモシロかった。とくにサブタイトルにもなっている” vacillation ”2つの極値を揺れ動いて生きていくのが人生、という解釈のあたりはグレイが許されない白黒社会を生き抜いていく上では役に立つ思想なのかもしれない。揺れているからこそ人間だ。

レビュー投稿日
2020年2月5日
読了日
2020年2月5日
本棚登録日
2020年2月5日
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