繁花 (上)

  • 早川書房 (2022年1月25日発売)
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章が変わると、過去と現在の話が代わりばんこに切り替わって物語が進んでいくのだけれど、六十年代から九十年代の過去と現在が、三人の主要な視点人物まで切り替わりながら描かれるので、最初、慣れるまでに時間がかかった。何というか、国の政情によって、苦しい生活を強いられたりする人々がいる過去と、豊かになった現在とのギャップが凄まじく、過去のパートで起きる出来事の悲哀感が増す。
とはいえ舞台は上海。中国の文化大革命の時代というと何となく暗く、政治活動の広まる一方で、苦しい生活が続くような世界観を思い浮かべていたが、都市部は、そういったイメージとは違った生活をしていたのだということが分かって面白い。個人的には、友達に協力してもらって、購入枚数に制限がある映画のチケットを買うシーンと、ベティという女の子のピアノが略奪されて、本人もまた、おばあちゃんとともに行方不明になるところが印象的だった。
とにもかくにも、印象に残るのは、一つ一つのエピソードのギャップである。休日に映画を見にいったかと思えば、ブルジョワ階級だとして家を荒らされる。汚い家へ引っ越しをさせられる。その生活の浮き沈みが、いかにも印象的だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年11月17日
読了日 : 2024年11月16日
本棚登録日 : 2024年8月14日

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