理工系の学生・研究員・大学教員はぜひとも読んだ方がいい。
研究倫理というと、研究不正に関するものが多いが、本書はタイトルの通り軍事研究に注目したもの。大学院の授業でもこういった話をされることはなかったが、知っておいた方がいい内容が多かった。
偉大な成果を残したハーバーが、率先して毒ガス研究を行っていた話が特に衝撃的だった。
科学者が戦争に協力してきた歴史、軍事研究に携わった科学者が言い逃れする常套句からはじまり、世界的な軍縮の流れ、軍拡路線に走る日本、そして「科学者は軍事研究研究に手を染めるべきではない」という結論に繋がっていく。
終章を読み終え、暗澹たる気持ちになった。
「武力による他国への侵略は起こらず、対話を通した平和維持が可能である、そのため軍備を増強して威嚇する必要も軍事研究を行う必要もない」というのが筆者の主張だ。
だが、2022年現在戦争は存在している。軍事研究を進めて威嚇し続ける国もある。「各国と連携して〜」とはよく見る文言だが、果たしてそれにどれほどの効果があるのだろうか。
かと言って科学者が率先して軍事研究を進めるようになれば、他国も負けじとより性能の高い武器を手にするようになるだろう。
今後科学者はどうするべきか。無力感を覚えた。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年11月30日
- 読了日 : 2022年11月30日
- 本棚登録日 : 2022年11月28日
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