今年の小学校一年生に読んでやりたい絵本50冊 その10
前にも紹介したことがあると思いますが、いまどこの小学校でも、一年生から四年生くらいまで、これは外さない1冊です。
お父さんが海から帰ってこなかったので、海辺のほったて小屋で貧乏暮らしをしているロン、ですが、これは昔の話ではなく、ロンの家の後ろには超高層ビルがそびえ立っていて、この話が現代であることを示唆しています。
嵐の日、無理して漁に出て、骸骨を釣り上げてしまったロンは恐怖のあまり浜辺へ逃げ帰りましたが、骸骨はちゃんとついてきていました。
恐さで気絶したロンを骸骨はベッドに連れていき、毛布をかけてやります。
やがて目をさましたロンが骸骨に持っているすべてのものを差し出したときに、骸骨に肉がつき、生きた人間に戻ります。
ここらへんは昔話の力を借りていますね。
そうして昔話ならそれはロンのお父さんなのですが、彼は見知らぬ他人だった。
自分にもかつて、ロンくらいの男の子がいた、と語る彼はその後、一緒に漁にでて、ロンを守るのです。
というふうに、この話は古臭くなりがちな昔話のスタイルを踏襲しながら、そこに現代の息吹を吹き込んで成功した作品です。
力強い絵は実に見事で、船っぱたをつかんで這い上がってくる骸骨に、子どもたちはロンと同じように震え上がり、そうして、最後の1ページ、ここだけカラフルになった絵にロンの喜びと安心を感じ取って、子どもたちは同じように安心し、ロンと同じように顔を輝かせてくれるのです。
2022/06/05 更新
- 感想投稿日 : 2022年5月29日
- 本棚登録日 : 2022年6月6日
みんなの感想をみる