ブライディさんのシャベル

  • BL出版 (2005年8月1日発売)
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感想 : 9

今年の小学校一年生に読んでやりたい絵本50冊
その20

まさかこれを一年生に読む日が来るとは夢にも思わなかった一冊です。
出版されたときも、うーん、誰に出せばいいんだろう、と悩み、大人の読み聞かせでしか使ったことがありませんでした(大人の会では例外なくウケます)。

“それは1856年のこと、ブライディさんはチャイムの鳴る時計でも陶器の人形でもなく、一本のシャベルを選んだのです”

で始まるこのお話は、シャベル一本持ってメイフラワー号でアメリカに渡り、マイナス40度の土地を開拓し、子どもたちを育て、必死に生き抜いた女の一代記です。
アメリカの子どもたちにとっては建国史ですから説明なしでもわかるでしょう。
でも、日本の小学生が、女の一代記を?

素晴らしくうまい短編です。人形でも時計でもなく、シャベルを選んだ、というこの一行だけで、ブライディさんの人となりがわかってしまうのですから。
真面目で正直で浮わついたとこのない娘さんなのだな、ということが……。

ところが、ある年、ふっと、これ、一年生にいけるんじゃないかな、と思い、試してもらいました。
その学校では二年生はダメだったそうです。
ところが一年生はまっすぐ聞き、うなづき、感動してくれた……。
そうして真剣な顔をして、これ、本当にあった話?ときいてきたそうです。

このブライディさんが本当にいたかどうかはわかりませんが、ブライディさんのような女性はたくさんいたはずです。

大人でもこの話の凄みがわからない人は大勢います。
そうして使われている版画の絵が日本人好みではないので、棚に突っ込んでおいたらまず出ません。
でもこれからの新一年生たちはこの話がわかり、そうして感動してくれる世代です。
ということは、彼らは真面目に、真っ正直に生き、人生に立ち向かっていくことは尊いことだ、という価値観を持っているのだ、ということでしょう。

強いものが正しくて、金を持ってるやつが偉いのよ、という価値観ではなく……。

2022/06/24 更新

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 【連載】今日の一冊
感想投稿日 : 2022年6月23日
本棚登録日 : 2022年6月24日

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