TRANSIT(トランジット)5号 ~ヒマラヤ特集 美しきヒマラヤが呼んでいる~ (講談社MOOK)
- 講談社 (2009年6月5日発売)
ラダックから帰って来てすぐにこの雑誌を本屋で見かけた。
表紙の「特集 美しきヒマラヤが呼んでいる」
という文字のすぐ下には
「ネパール/ブータン インド:シッキム/ダージリン」
と書かれている。
手を伸ばさずにはいられなかった。
このTRANJITという雑誌は初めて観たのだが、美しい写真もさることながら、内容も豊富でなかなか楽しい。
パラパラと捲るだけでもいいし、文章を読み込むにも興味深い。
登山家が見たヒマラヤから、写真家がレンズを通して見た人々の生活まで取り上げられている。
懐かしいシッキムやダージリンの風景にも出会えた。
ブータンに関する記事の中で印象深い文章があった。
「旅の途中、日本や欧米の多くの団体客とすれ違ったが、まるで理想郷を発見したように、彼らが口々にブータンを絶賛しているのを目にした。
(中略)
しかしブータンは本当に「持たざる者」の道を選択することができるのだろうか。僕が覗いたカメラのファインダーの先に、そこには確かに、いくつもの「幸せそうな顔」があった。しかし時折感じる彼らの熱い視線の先に、僕が持つカメラやパソコンがなかったとは、僕には断言することはできない」
有名な「国民総幸福量」の思想で知られ、緩やかな鎖国状態ともいえるブータン。
世界最後の理想郷として有名となったが、これから先、目まぐるしいスピードで変化していく外の世界の中で、どういった道を進んでいくのだろうか。
民族衣装を着た人々に、伝統的な暮らしを守りながら、慎ましく生きていってほしい、美しい風景の中に近代的な建物は似会わない、純粋な人々にはインターネットに潜む悪には触れてほしくない、利便性を追求した暮らしをしてほしくない、このまま何も変わらないで牧歌的なままでいてほしい、
というのは、理想郷を失ってしまった人間のエゴなのだろう。
- 感想投稿日 : 2010年1月11日
- 読了日 : 2010年1月12日
- 本棚登録日 : 2010年1月12日
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