雲をつかむ少女

著者 :
  • 講談社 (2015年3月20日発売)
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本棚登録 : 111
感想 : 17
4

SNSをはじめとするネットと少年少女の短編集と言ってしまえばその通りなのだが、とても読後感の良い本だった。
子供達とネットをめぐる話題は、ネットの危険性や魅力をわからない大人たちといった切り口が想像される。児童書の棚で見つけた本書も最初はそんな感じなのかなと思って読み始めた。
残虐で、でも世界に存在する事実の一片である動画を見てしまった少女。身近な話題に終始する友人たちに苛立つ心。逆にネットを通して遠い世界を知っているとリアルの何気ないやり取りから距離を置く少女。ソーシャルゲームを通して自分の持つ価値観に気がつく少年。親に認められない寂しさと承認欲求をネットアイドルになることで満たそうとする少女。母親が生まれる前からネットにつけている育児日記が嫌でたまらないのにそれを言えない少女。
大人も含めて様々な登場人物がネットを巡って悩み傷つき思いを新たにし違う自分への一歩をあるもうとする。その意味ではこの本は確かに児童文学なのだと思う。と、同時にネットの利便性に寄りかかりつつも疲れている大人も含めた多くの人に爽やかな風を吹き込むのではないかと思った。
最後の二作は、おそらくジョブズのエピソードを模した人物の母親と日本の引きこもり青年のエピソードだが、とても印象に残った。
There is always light behind the clouds.
雲(クラウド)の向こうは常に青空なのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 一般
感想投稿日 : 2017年1月29日
読了日 : 2017年1月29日
本棚登録日 : 2017年1月29日

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