ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ (3) (裏少年サンデーコミックス)

著者 :
  • 小学館 (2024年6月11日発売)
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感想 : 4
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ニュースを「刷り込み」と言いながらテレビで取り上げられると囃し立てる。他人の否定は「肯定の証拠」なのに自分は否定する。
他人に「大きな成功より小さな幸せ」を説く一方で、「“大いなる覚醒”じゃなく“平凡な起床”」を諭される。

「多分陰謀なんてないよ。きっと大きな不安と小さな偶然があるだけだ。」
漠然とした不安に耐えるより、理由と答えを「見つけた」方が心は平穏になる。散りばめられた痛々しい矛盾と、変えようのない困難へ向き合うことや諦めることの難しさの描写が見事。

《余談》
テーマにした陰謀論そのもののハマるきっかけや表紙にあるような情報が少なかった。特にここ数年は新型コロナと共に蔓延りハマった人も多かったはずだが、ネット陰謀論には触れられず。
また、渡辺以外の登場人物たちの台詞に重みがなく、思想や背景、パーソナリティのエピソードでの描写が少ない(説明台詞程度)為、キャラクターの魅力が薄かった。

過激主義や陰謀思考などを専門に研究している行動科学者のヤン=ヴィレム・ファン・プロイエンは、陰謀論について、
① 自分自身や自分たちの集団が重要であると認識することで脆弱な自我を守ることができる
② 自分の信念や行動を正当化することができる
③ 刺激的な物語の中で謎を解明する機会を通じて楽しませてくれる代替現実を可能にしてくれる
という3つの利点を挙げている(Psychological benefits of believing conspiracy theories/Current Opinion in Psychology, 47, 101352.)。
①にあるように、陰謀論は尊厳を取り戻す機能があり、渡辺が「人生が始まった」と感じたのはこの機能によるものなのだろう。

陰謀論ってオリジナル設定で世界を救うTRPGみたいだな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2024年6月12日
読了日 : 2024年6月12日
本棚登録日 : 2024年6月11日

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